ロシア製のワクチンについては、治験が十分なされたとは言えない段階で承認を受けたこともあり、安全性に対する懸念もある。なにしろ、プーチン大統領自身が、まだ接種を済ませていない。「試験が終わっていないワクチンを大統領が受けるわけにはいかない」(大統領報道官)との理由からだ。

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 もう一つ、スプートニクVにとって課題となっているのは生産体制だという。11月20日にオンラインで開催されたAPEC首脳会議の中で、プーチン大統領自ら、「ロシアのワクチンは完全に安全で効果的だ。唯一の問題は大量生産体制の確立だが、ロシアは拡大に取り組んでいる」と語っているほどだ。

 日本メーカーと提携できれば大量生産体制も強化できるし、世界的に信用のある日本のような先進国と「製造」から手を結ぶことで、ロシアは自国開発のワクチンの世界的な信用につなげ、有効性を認めてもらおうとしていた意図もあったと見られる。

 だが結局、話を持ち掛けられた日本企業は、RDIFとは契約をしないことに決めた。ネックとなったのはやはり安全性だ。生産はともかく、日本での承認は、なかなか難しいとの判断があったという。

 もっともロシア国内でも、12月5日に大量接種がスタートしたものの、国民でさえ自国製ワクチンには警戒を示している。ワクチン接種を希望する人が少なく、クリニックなどはガラガラになっているという。ワクチン接種前後に飲酒を控えるよう当局から指示されていることも、“酒好き国民”がワクチン接種を敬遠する背景にあるとの声もあるのだが・・・。

 一方で、量産体制の確立に向けた動きは相変わらず難航しているようだ。ロシア当局は夏の段階で、年内3000万回分の供給を約束していたが、現実には10分の1にも届かない200万回分程度にとどまると見られ、大量生産に向けた解決策探しは続いている。

 先の日本企業の関係者は、「RDIFは同様のアプローチを他の国でも行なっていたようだ」と指摘している。おそらく自国以外でも生産体制を整え、それを足掛かりに世界各地へのワクチン供給を目論んでいたのだろう。