©2020『私をくいとめて』製作委員会

 ニュースで「草食系女子」の増加を知った。東京大学の研究結果によると、「この30年で、恋愛に消極的な草食系女子が増加している」そうである。異性と交際していない18歳から39歳までの独身女性が全体的に増加しており、1987年と2015年を比較すると、30歳から34歳は約3倍、35歳から39歳は約2倍に増えているという。

 何年か前、「草食系男子」が騒がれた時は同時に「肉食系女子」が話題だった。草食×肉食でなんだかバランスが取れていたような気もするが、草食×草食なら壊滅的か。いや草食同士の方が合いそうともいえるか。動物界では草食と肉食動物ではそもそもカップルにはなれないし・・・。

脳内に「相談役」を住まわせるおひとりさま

 恋愛に積極的になれない草食系女子をヒロインに据えた映画『私をくいとめて』。こじらせ女子の暴走ファンタジーを描いた傑作『勝手にふるえてろ』を生んだ原作・綿矢りさ&監督・大九明子が再タッグ。

 前作『勝手にふるえてろ』で松岡茉優が演じていた恋愛経験0のヒロインが恋するあまり妄想しまくっていたのとは対照的に、『私をくいとめて』では、のんによるヒロインがあまりの長きにわたるおひとりさまライフのため、頭の中に相談役を作り出しており、無謀な恋に落ちないよう自分の行動に自らストップをかける仕組みになっている。『勝手にふるえてろ』から何ステージも上に螺旋階段で登ってきてしまったような、それはひどいこじらせ具合なのである。

©2020『私をくいとめて』製作委員会

 平和なおひとりさま生活を満喫している会社員の黒田みつ子、31歳。他人からは一人に見えても、彼女の脳内には常に相談役「A」がいて、彼と会話しているから全く寂しさを感じない。「A」は彼女が作り出したもう一人の自分。だから彼女を傷つけることもしないし、基本的に肯定してくれる。現実の世界でも、彼女には不思議な関係の男性がいた。近所に住んでいる得意先の年下営業マン、多田くんである。