「イノベーション」とは、モノや仕組み、サービス、組織、ビジネスモデルなどに新たな考え方や技術を取り入れて新たな価値を生み出し、社会にインパクトのある革新や刷新、変革をもたらすことを意味する。HR領域においても、組織づくりと密接な関係にあるため、「イノベーション」に対する関心が集まっている。本記事では、「イノベーション」の意味や定義、種類、そしてイノベーションに取り組む企業が直面する課題などを掘り下げていく。
そもそも「イノベーション」とは何か? 今のうちに知っておきたい言葉の意味や定義、種類
「イノベーション」とは、モノや仕組み、サービス、組織、ビジネスモデルなどに新たな考え方や技術を取り入れて新たな価値を生み出し、社会にインパクトのある革新や刷新、変革をもたらすことを意味する。
現在の企業にとって、イノベーションを成功させられる組織であるかどうかは非常に重要な経営課題だ。ところが、「イノベーション」という言葉の意味を考えた時、「何か新しいことに挑戦すること」、「停滞した状態から変革をおこすこと」といったような、なんとなく、ぼんやりとしたイメージで使用していないだろうか。まずは正しい概念を理解するために、大前提として、「イノベーション」の言葉の意味と定義から確認していこう。
近年、ビジネスシーンで頻繁に目にするようになったこの概念は、ヨーゼフ・シュンペーター、クレイトン・クリステンセン、ヘンリー・チェスブロウの3人の提唱者による理論から発生した。それぞれの理論は下記の通り。
(1)ヨーゼフ・シュンペーターの「5種類のイノベーション」
シュンペーターはオーストリアの経済学者で、1912年に発表した著書の中で「イノベーションを核とした経済発展理論」を展開した。彼は「経済の発展には企業家よるイノベーションが重要である」と提唱。下記の5種類をイノベーションとしてあげている。
・プロダクト・イノベーション(新しい生産物の創出)
従来とはまったく違う、革新的な新商品(新製品・新サービス)を開発すること。
・プロセス・イノベーション(新しい生産方法の導入)
企業の商品(製品やサービス)を大きく変化させるのではなく、生産工程や流通方法を改善すること。
・マーケット・イノベーション(新しい販売先・消費者の開拓)
新たな市場に参入し、新たな顧客、ニーズを開拓すること。
・サプライチェーン・イノベーション(新しい供給源の獲得)
商品をつくるための材料や、その原材料の供給ルートを新規開拓・確保すること。
・オーガニゼーション・イノベーション(新しい組織の実現)
組織変革によって業界や企業に大きな影響を与えること。
(2)クレイトン・クリステンセンのイノベーションと「イノベーションのジレンマ」
ハーバードビジネススクール 教授のクレイトンが、著書の中で提唱した理論。イノベーションには「創造的/破壊的」の2種類の手法があるという。
・創造的イノベーション
顧客の意見や要望を取り入れながら進めるイノベーション。「持続型イノベーション」ともいう。
・破壊的イノベーション
既存の概念にとらわれず、新たな発想を積極的に取り入れることで、新製品や新サービスを生み出していくイノベーション。「破壊型」ともいう。
なお、クレイトンは上記の理論とともに「イノベーションのジレンマ」という課題も説いている。「イノベーションのジレンマ」とは、イノベーションに取り組む過程で起こった何かの要因によってイノベーションが起こせない状況に陥り、その結果、他の追随や追い越しを許してしまうことである。
(3)ヘンリー・チェスブロウの「クローズドイノベーション/オープンイノベーション」
ハーバード大学 経営大学院 教授・チェスブロウが提唱した、イノベーションの2つのパターン(クローズド/オープン)である。
・クローズドイノベーション
1990年代以前の、研究から製品開発までを自社の経営資源のみで行う「自前主義」が主流だった時代に流行したイノベーションを指す。
・オープンイノベーション
外部資源や他業種がもつ技術・ノウハウを組み合わせて活用する手法。90年代以降、インターネットやテクノロジーの飛躍的発展に呼応してグローバル化・産業構造の変化・人材流動化が加速し、市場競争も激化したことで、大企業といえども自社の資源のみでイノベーションを起こすことはほぼ不可能となったために注目された。現在の日本では、クローズドイノベーションからオープンイノベーションに変化しているといえる。
●現在、ビジネスシーンで使われている「イノベーション」とは
ここまで、「イノベーション」という言葉を使う上で押さえておきたい、基本中の基本となる理論を紹介した。では、現在企業が必要としている「イノベーション」とは何かというと、「これまでにないサービスや、今はまだ存在していな新たな製品などを生み出すこと」である。語源の「innovare」(ラテン語)がもつ「新しくする、更新する」といった意味から派生した。
よく「技術革新」と和訳されてきたが、本来は技術に限定する狭義の単語ではない。サービスや組織、ビジネスモデルなどの新たな考え方や新技術によって、今までにない、まったく新しい価値創造を目指すことだ。単に新しい物を作る「クリエイト(クリエイティブ)」とは異なり、「社会に対して革新・刷新・変革をもたらす」という広い概念である。