事実上の勝利宣言を行ったバイデン候補(写真:ロイター/アフロ)

 米大統領選挙の最終投票日である11月3日、民主党はまず下院を押さえ、上院をも共和党から奪う勢いである。その時点で、バイデン民主党大統領候補が予期せぬ行動に出た。

 開票結果が完全に出そろう前に、「最後の一票が数えられるまで結果はわからない」と前置きしながらも、「勝利を確信している」とペンシルベニア州やミシガン州など重要未確定州における自己陣営に有利な票読みを披露し、事実上の勝利宣言を行ってしまったのである。

 保守派のFoxニュースでさえ、早々と「伝統的に共和党州であったアリゾナ州を民主党が奪い返した」と伝えるなど、バイデン氏の票読みは演説時点における大勢と矛盾がなく、大きな逆転の流れが起こらない限り、青色が党のカラーである民主党が大統領職も奪い返し、ホワイトハウス・上下院をすべて勝ち取る「ブルーウェーブ」が実現する可能性が出てきたのだ。(【追記】その後、上院は共和党が維持する見込みが伝えられ、バイデン氏が大統領に就任しても思い通りの政策遂行が困難になるとの見方が優勢になってきた)。

 これに対し、選挙結果に関して開票開始時から沈黙を保ってきたトランプ大統領が、「私が勝利した」「開票で詐欺行為があった」「バイデン氏は公式な発表が出る前に選挙結果をかすめ取ろうとしている」と猛反発をして、開票結果を受容しない旨の演説を行った。事実上、大統領選で投票した有権者の票を無効化する宣言であり、「民主主義の否定だ」として共和党内からも大きな反発が出ている。

 いずれにせよ最終的な判断は、トランプ大統領が任期中に任命した3人の判事により保守化された米連邦最高裁判所に委ねられる。選挙候補の片方が潔く敗北を認め、当事者間で勝負の決着をつけることができないという、最も望ましくない展開だ。