2017年7月、ドイツ・ハンブルクで開かれたG20首脳会議の際のトランプ大統領とジョコ・ウィドド大統領(写真:ロイター/アフロ)

(PanAsiaNews:大塚 智彦)

 日本では10月中に予定されている菅義偉首相の最初の外遊先がベトナムとインドネシアになることが報じられている。目的の一つは、中国が領土的野心を見せる南シナ海情勢を巡って東南アジア諸国との連携を深めることとされ、「自由で開かれたインド太平洋」構想の推進も呼びかける見通しという。

 同じように、米国も対中国を念頭に、インドネシアの取り込みに動き出したようだ。

 インドネシア国防省は10月8日、プラボウォ・スビアント国防相が10月15日から19日まで訪米するとの公式日程を明らかにした。

 実は米国はこれまで、プラボウォ氏個人に対して長年ビザの発給拒否を続けていた。それが一転、今回の訪米のためにビザが発給されたのだ。これは、インドネシアと米国が、互いに国防分野での緊密な関係構築に向けて一歩踏み出したことを意味すると見られている。

 近年、南シナ海では、中国が一方的に自国の権益を主張して活動を活発化させている。これに対して強い姿勢を示す米国は、同海域周辺国と連携を強化することで、中国の動きを牽制したい思惑がある。

 南シナ海に点在する南沙諸島、西沙諸島などの島嶼に関してインドネシアは中国との間で直接の「領有権問題」は抱えていないが、南シナ海の南端に位置するインドネシア領ナツナ諸島の北方海域に広がるインドネシアの排他的経済水域(EEZ)については、中国の言い分によれば、彼らが主張する権益海域「九段線」と一部重複していることにされている。要するに、インドネシアも南シナ海問題では決して部外者ではないのだ。その意味ではインドネシア側にも、中国に対するけん制として、米国との関係を強めておきたいという思惑があった。

人権侵害事件への関与疑いで続いた「ビザ発給拒否」

 10月8日、プラボウォ国防相の訪米日程を発表したインドネシア国防省のスポークスマンは、「今回の訪米はマーク・エスパー米国防長官の招待によるものであり、両国の国防分野での2国間協力に関して協議するいい機会となる」と訪米の意味を説明した。

 プラボウォ国防相は、国防相就任以前のことではあるが、2000年と2012年の2度にわたって訪米を希望しながらビザ発給を拒否されたことある、と報じられている。