(舛添 要一:国際政治学者)
10月2日にトランプ大統領夫妻の新型コロナウイルス感染が判明し、世界を驚愕させた。大統領選挙1カ月前という時期であり、「オクトーバー・サプライズ」と言われている。もちろん選挙の行方に関わってくるし、万が一のことがあれば国際情勢にも甚大な影響を及ぼす。
前日に、トランプ側近のホープ・ヒックス顧問のコロナ感染が判明したが、彼女は9月30日のミネソタ州での支持者集会にトランプ大統領に同行していた。そこで、トランプ大統領とメラニア夫人も、念のため隔離・検査を行ったところ、陽性であることが分かり、2日の夕方には軍の病院に隔離され、レムデシビルなどを投与される治療を受けた。
「核のボタン」を携行する将官までも感染
トランプ大統領は74歳と高齢であり、しかも肥満でもあるため、重症化が懸念されたが、4日夕方には突然車で病院を出て病院前に集まった熱狂的な支持者に手を振って、またすぐ病院に戻った。これは、元気であることを誇示する政治的パフォーマンスであり、感染を拡大させると批判された。
そして、5日夕方には退院し、ホワイトハウスへ戻っている。早期の回復と、力強さを有権者にアピールするためで、それを治療よりも優先させたのである。
しかし、ミラー上級顧問、マケナニー大統領報道官らトランプ大統領の側近などに感染者が続出し、FEMA(連邦緊急事態管理庁)によれば、その数は34人に上っている。これはホワイトハウスの集団感染と言うほかはない。「核のボタン」の入った鞄を持って大統領に随行する将官までが感染している。
米軍トップにまで感染が拡大したのは、危機管理上深刻である。統合参謀本部のミリー議長以下、コロナ感染者と接触した疑いがあるため、ほぼ全員の幹部が自主隔離している。ホワイトハウスの会合に出席した沿岸警備隊のレイ副司令官が感染したためである。
また、7日には米海兵隊のナンバー2、トーマス大将も新型コロナウイルスに感染していることが判明している。