これは地方の小さな「弁当屋」を大手コンビニチェーンに弁当を供給する一大産業に育てた男の物語である。登場人物は仮名だが、ストーリーは事実に基づいている(毎週月曜日連載中)
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昭和62~63年:40歳~41歳
原田社長の会社は、広島市内の中心部の大手不動産会社のビルの4階にあった。
約束の5分前、恭平は受付に立った。応接室に通された恭平は、案内されたソファーの横に立ち原田社長の入室を待った。
応接室に入ってくるなり、原田社長はソファーにどっかと腰を下ろし足を組み、腕組みをした。恭平は腰を90度曲げ、深々と頭を下げて詫びた。
「この度は大変申し訳ありませんでした」
「何が、申し訳ないと思うとるんや」
「私の不手際のため、ご迷惑をお掛けしてしまったことです」
「別に迷惑はしとらん。汚いやり口に不愉快な思いをしとるだけじゃ」
「それは、全くの誤解です」
直立不動のまま、恭平は事の経緯を丁寧に説明したうえで、改めて自らの不明を詫びた。
「よしよし、もう分かった。分かったから、もう帰れ」
腕組みを解き、立ち上がろうとした原田社長を手で制し、恭平は問いかけた。
「本当に許していただけましたか」
「分かった言うとるじゃろぅが」
「ありがとうございます。それでは、誠に僭越ですが、お詫びはここまでにさせていただきます。そして、改めてお願いします。甘宮町の土地を私に譲ってください」
「何っ、お前は詫びに来たんじゃないんか!」
「もちろんお詫びに参りましたが、お許しいただけたなら、今度はお願いを申し上げます」
「ホンマに、厚かましい奴じゃのぅ、お前は。何歳になるんや、お前は」
「満40歳になったばかりです」
「若いのぅ。社長になって何年や」
「やっと、4年になります」
「ほうか、まぁ、立っとらんで、座れ」