28日夕、官邸で辞任表明の会見を行う安倍晋三首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 安倍晋三首相が8月28日夕、辞意を表明した。筆者は8月22日、「政局は重大局面、安倍政権はいつまでもつのか」と題した原稿で、早期の「辞意表明」や「内閣総辞職」を想定したメディアの動きに言及していたが、その通りの展開となった。まずは7年8月にわたって、持病を抱えながらも重責を果たしてきた安倍首相に敬意を表する。

(参考記事:政局は重大局面、安倍政権はいつまでもつのか
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61811

内閣府の官僚が気づいた日程の「違和感」

 8月27日夕、翌28日の安倍首相の日程が明らかになった。メディア並びに永田町、霞が関の住人がほぼ独占的に入手している公開情報である。

 しかし、内閣府の切れ者で知られる官僚は日程をみて違和感を覚えた。

「臨時閣議が夕方にセットされているのはなぜか」

 毎週金曜日は定例閣議が開かれる。2回も閣議を開く必要があるのか。ひょっとして、安倍首相がなにか考えているのではないか。閣僚の辞表を取りまとめての内閣改造、理屈としては内閣総辞職もあり得る――。

 28日の臨時閣議は「新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの確保の方針」を決定するために午後4時過ぎから開かれた。午後1時過ぎから行われた新型コロナウイルス感染症対策本部に連動した手続きの一つである。

 結果的に、この官僚の推測は外れたことになる。ただ、違和感を覚えた点では大正解だった。実際、安倍首相は28日の臨時閣議で総理大臣として辞意を表明したからだ。

 議院内閣制の仕組みに従い、安倍首相は先に午後2時過ぎに自民党本部を訪れ、臨時役員会などで自民党総裁として辞意を伝達している。そして4時から前述の臨時閣議、そして5時から辞任表明の記者会見を行った。28日午後5時からの記者会見予定が固まったのは26日とみられているが、この時点で安倍首相は辞意表明に向けた段取りをすべてセットしていたことになる。

 安倍政権は閣議決定を歴代政権よりも多く行う傾向にあるため、コロナ対策での臨時閣議はおかしいとはいえないが、臨時閣議は緊急を要する場合に行うのが通例である。対策本部の日程をずらすなどして、定例閣議でコロナ対策を閣議決定すれば事足りる。1日2回の閣議はやはり何かの兆候だったのである。