ゲノムを見ずしてPCRの意味なし

 実際、PCR検査法は1993年にノーベル化学賞を受賞した、画期的なウイルス検査手法です。開発したキャリー・マリス(1944-2019)は昨年惜しくも亡くなりましたが、このコロナの状況を見ていたら、なんと言ったことでしょう・・・

 PCR、PCRといいますが、そもそも何の略か、分かっていないケースが、マスコミでは99%と思いますので、そこから確認しましょう。

 DNA/RNA重合酵素=ポリメレース(Polymerase)の「P」、鎖(Chain)の「C」、反応(Reaction)の「R」でPCR、つまり「DNA重合酵素連鎖反応法」というのが、PCRの本名になります。

 その意味するところの詳細は別稿に譲りますが、一言で表すなら「生物の細胞に頼ることなく、極く微小な量しか存在しないDNA/RNAを大量に複製して、その正体を明らかにする驚異的な検査法」というものです。

 現在の利用法はRNAウイルスである新型コロナウイルスがもつ3万個ほどの「塩基」=ゲノムの情報を読んでいます。

 新型コロナ対策で、いま世の中に知られている以上の活用法は次回以降に記します。

 この方法ができたおかげで、あらゆるDNA鑑定すなわち親子の確認や法医学での分子生物学的物証、新型コロナを含む病源体の特定から、太古のDNAを復活させるクローニング技術まで、およそ広範な応用に道が開かれました。

「現場に残された遺留物から採取されたごく微量のDNAから、犯人の遺伝情報が特定」されたりするようになったのは、1982年に製薬会社に勤務するサーファーだったキャリー・マリス青年が、デートの途中で思いついた革命的な方法(PCR)を使って微少量のDNAを大量に増幅、確認することができるようになったからにほかなりません。

 ここで保坂世田谷区長を筆頭に、きちんと意識のある首長や行政責任者の皆さんに、お願いしたい重要な点があります。

 PCR検査は「新型コロナに感染していた・していなかった」という、〇×式の判じ物の検査ではありません。

 目に見えない極微の病源体のゲノム、遺伝情報があらかた分かるという、非常に高度な分析にほかなりません。

 昨今は公文書やら記録やらをさっさと抹消するのが流行っているようですが、疫学で一貫性のあるデータ・テイキングをしなければ、私たちは伝染病に負けてしまいます。