また、クリストファー・レイ連邦捜査局(FBI)長官が7月7日にワシントンで行った、米国内での中国当局の犯罪状況に関する演説でも、「中国共産党」という表現が目立った。

 さらに顕著だったのは、7月13日にポンペオ国務長官が発した、南シナ海での中国の軍事膨張に対する非難声明である。同長官はこの声明で「中国政府」という表現を一切使わず、すべて「中国共産党」という言葉で通した。

すでに米国内にいる共産党員も対象に?

 トランプ政権はなぜ「中国共産党員の米国入国禁止」策の検討を始めたのか? ニューヨーク・タイムズの同報道によると、トランプ政権は、中国共産党が政策として米国内で知的所有権を不法取得し、米国の諸機関へ不当な影響力を行使したり、中国で活動する米国人の出国を不当に阻止したりしていると主張しており、そうした中国側の措置への対抗手段であるという。

 トランプ政権は議会の承認を得て、中国の新疆ウイグル自治区でウイグル人の強制収容などに関与した中国当局者を米国に入国させない措置をすでに発効させている。ニューヨーク・タイムズの同記事は、中国共産党員の米国入国禁止策を実行に移す場合は、すでに米国内にいる中国共産党員も対象として出国を求めるという厳しい措置を考えていると伝えている。

 ただし、この措置の実施には障壁も立ちふさがる。同報道は、中国共産党の正式党員は米国側の推定では約9200万人いるが、個々の中国人の党員認定が難しい場合も多く、すべての党員とその家族の米国入国禁止という措置の実行には技術的な困難が伴うと指摘する。また、中国側は当然、報復措置をとるだろうとも予測していた。

 中国側はこの報道を受けて、外務省の華春瑩報道官が7月16日、「もしその報道が事実なら、米国は『哀れ』だと人々に感じさせるだけだ」(人民日報日本語版)と激しく反発した。