これまで対面で行っていた採用面接を、Web会議システムを使った「オンライン面接」に切り替える企業が増えている。新型コロナウイルスの感染拡大を防止する対策として、オンライン面接が利用されていると思われがちだが、実は、多くのメリットがあり、以前から活用している企業もある。このオンライン面接とは、いったいどのようなものなのだろうか。メリット/デメリット、実施するうえでのポイント、ツールなどをまとめた。

「オンライン面接」とは?

 オンライン面接は、新卒採用や中途採用において、電話やWeb会議システムなどのツールを利用して候補者と面接を行う採用手法である。応募者は、スマホやPCから、指定のツールにアクセスするだけ。企業まで赴く必要がなく、移動時間や交通費の負担も大幅に減らすことができる。企業としても、地方在住の学生や転職希望者にアプローチしやすいメリットがある。

 オンライン面接のメリットに着目し、早くから実施しているのがセプテーニ・ホールディングスだ。同社では、2018年春入社の新卒採用から、学生が一度も来社せずに選考が完結する「オンライン・リクルーティング」を実施。エントリー数は前年比で約2.3倍と大幅に増えたという。

オンライン面接のメリットとは?

・新型コロナウイルスの感染防止に最適
Web会議ツールを使って、インターネット回線越しに会話をするため、飛沫による感染リスクはない。また、面接官が複数名いたとしても、それぞれが別の場所からアクセスすることにより、一つの部屋の中で密になることも避けられる。感染対策としては、最も効果のある手法だといえる。

・選考応募のハードルが下がる
オンラインの実施によって候補者の移動による時間や費用の制約がなく、選考応募のハードルを下げることができる。特に、地方在住の候補者は、一次面接、二次面接と回を重ねる度に移動を繰り返し、時には宿泊手配も必要になる。このような時間と費用のロスを大幅に低減できる。

・選考の辞退率を改善できる
エン・ジャパンが2018年に行った調査によると、中途採用において面接を受ける前の辞退が54%もあるという。この中には「日程が合わないので選考を辞退する」という候補者も少なくない。オンライン面接なら、実施日程を候補者と合わせやすく、都合が合わないことによる辞退を減らすことが期待できる。また、候補者に早期に接触することで、企業側の熱意を伝えたり、迷いを払拭したりでき、意向度を高めることにもつなげられる。

・面接官の育成につなげられる
オンライン面接のツールには、録画機能が搭載されているものがある。この録画機能を利用することで、候補者に意識させることなく、面接の模様を録画できる。録画した映像は、後から面接官の振り返りに利用できるほか、育成教材として活用することも可能だ。

オンライン面接のデメリットとは?

・相手の表情が読みにくい
オンライン面接には、当然デメリットもある。よいツールを使ったとしても画質には限界があり、候補者と対面するリアル面接と比べると、表情や仕草を読みにくい。また、面接の準備が整った状態でツールにログインするため、部屋に入ってから着席するまでの所作など、その人を印象づける振る舞いそのものを確認することは難しい。また、対面だからこそ感じ取れる、緊張感や変化にも気づきにくい点が挙げられる。複数人で面接を行い多角的に判断する、最終面接のみ対面にするなど、人物を見極める工夫が必要だ。

・通信状況によっては、途切れたりノイズが入ったりする
Web会議システムはインターネット回線を利用する。通信回線は条件によって不安定になり、映像や音声が途切れたり、ノイズが入ったりすることがある。少しでも安定して通信できるようPCは、無線LANではなく、有線LANを使うようにしたい。候補者も同様で、やむを得ずスマートフォンやタブレットで接続する場合、通信が途切れたりノイズが入ったりする場合は、窓際や他の部屋など、通信回線が安定している場所に移動してもらうとよい。

・録画データの不正利用や流出のリスクがある
面接の模様を録画して、面接官の振り返りや育成教材に使うことをメリットとして挙げた。しかし、この映像には個人情報に関わる内容が多分に含まれる。利用には細心の注意が必要だ。録画自体は違法ではないが、映像データが流出すると、処罰の対象となる。利用時はプライバシーや個人情報が分からないようにし、不要なデータや振り返りが終わったデータは速やかに削除するように徹底したい。