千人計画への関与を口止め

 FBIのクリストファー・レイ長官は7月7日、ワシントンの大手研究機関ハドソン研究所で「中国の政府と共産党による米国の経済、国家安全保障への脅威」と題する講演を行った。

 同長官は「現在FBIが捜査中の、外国機関による米国の官民に対する約5000件の各種犯罪案件のうち、半数は中国関連だ」として、中国の政府機関や軍組織、国有企業、民間企業などがそれぞれの組織と人員を投入して、米国の経済や安全保障を害する犯罪行為を働いている、と言明した。

 それらの犯罪活動は、米国政府機関に対するスパイ活動、米国官民からの高度技術の不法取得、米国官民へのディスインフォーメーション(虚偽情報)による影響力行使など広範に及ぶという。

 レイ長官はとくに中国の「千人計画」の米国にとっての危険性を強調し、同計画に関わる最近の犯罪事例を報告した。

 千人計画(中国での正式呼称は「海外高層次人才引進計画」)とは、中国政府の国務院と共産党中央組織部が主体となって2008年末にスタートしたプログラムだ。諸外国の理工系の最高級人材を破格の好待遇で集め、中国の軍事、経済の発展に寄与させることを目的としている。

 中国政府は同計画の存在を公表し、2017年までに合計7000人の理工系の科学者、研究者を集めたとされている。だが、その具体的な活動内容はこれまで秘密にされてきた。

 米国ではこの千人計画への警戒が高まり、連邦議会上院の国土安全保障政府問題委員会が特別調査を実施して、2019年11月にその結果を報告書にまとめて公表した。