「叔父は社会病質人格障害者です」
ドナルド・トランプ米大統領のただ一人の姪、メアリー・トランプさん(55=臨床心理士、博士)の「Too Much and Never Enough: How My Family Created the World's Most Dangerous Man」(尽きることなき貪欲さ:わが一族はいかにして世界一危険な男を作り上げたか)が14日、全米各地の書店の店頭に並ぶ。
メアリーさんは、トランプ大統領の長兄、フレッド・ジュニアの一人娘だ。
メアリーさんの本には2つの「爆弾」が装填されている。
一つは、臨床心理士として叔父トランプ氏が「社会病質人格障害者」(Sociopathic Tendencies)であると断定した「カルテ」。
もっともこれまでにも精神科医や心理学者ら37人が共同研究・執筆し、トランプ氏の不安定な精神状態が異常なことを指摘した本は出版されている。
しかし、それらの診断材料はすべて公表されたデータ。どこまでも一歩離れたところで診断した「カルテ」だ。
一方、大統領と濃い血でつながる姪の臨床心理士の「カルテ」とは迫力が違う。
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今一つの「爆弾」は、祖父フレッド・シニアの遺産相続をめぐってトランプ氏が税金詐欺と脱税を率先して行っていた「事実」を立証する納税申告書を含む財務記録文書。
折しも(判決は予定されていたものだが)発売の4日前、米連邦最高裁はトランプ氏の納税その他の財務記録をニューヨーク大陪審に開示することを命じた*1。
判決は7対2。
ジョージ・W・ブッシュ第43代大統領に指名された保守派ジョン・ロバーツ首席判事(最高裁長官)も賛成票を投じた。憲法尊重第一主義を貫く同判事の面目躍如といったところだ。
トランプ大統領に任命された2人の保守派判事も多数意見に従った。
政権就任以来、最高裁の保守化を最優先議題に掲げ、実現したと思っていたトランプ氏にとっては大誤算だ。
(米国の伝統的な保守主義が何かを分かっていない知的常識の欠如と言っては米大統領に対して失礼か)
ロバーツ首席判事は判決文で「大統領といえども刑事容疑に関する召喚から免責されることはない」と読み上げた。
*1=ニューヨーク連邦検事局の検事がトランプ氏の元不倫相手(ポルノ女優)に対する「口止め料」支払い疑惑をめぐる捜査の一環として財務記録の提出を求めていた事案で、トランプ氏は現職大統領は完全な刑事免責を与えられると主張して開示を拒否してきた。なお野党民主党主導の下院司法委員会からの開示要求については下級審に差し戻した(こちらは大統領選を前にあまりにも生臭い政治問題が絡む。最高裁はその点を配慮したものと思われる)。