IBMロゴ(写真:ロイター/アフロ)

 米CNBCロイター通信の報道によると、米IBMのアービンド・クリシュナ最高経営責任者(CEO)は米連邦議会議員に書簡をお送り、同社が顔認識事業から撤退することを告げたという。

IBM、研究開発や販売、更新を中止

 ソフトウエアの提供中止を明らかにし、市民の監視や人種的分析を目的とした使用に反対の意向を表明。連邦規則の制定と警察の説明義務厳格化も求めた。

 「市民の監視、人種的分析、基本的人権と自由の侵害といった当社の価値観や誠実・透明性の原則に合致しない目的で、顔認識を含むいかなる技術を使用することは、他社が提供するものも含め断固として反対し、容認しない」とクリシュナCEOは書簡で述べたいう。

 米ミネアポリスで白人警官に取り押さえられた黒人男性が死亡した事件を受け、人種差別への抗議が全米に広がり、警察組織の改革を求める声も強まっている。CNBCによると、このIBMの事業撤退は、この事態が進展する中で決定されたという。

 IBMは今後、顔認識技術の研究開発や販売、更新を行わないという。クリシュナCEOはその時期について言及しなかったが、議員らに「今こそ、国内の法執行機関による顔認識技術利用の是非やその方法について、全国的な対話を始める時だ」と呼びかけたとロイターは伝えている。

人権擁護団体「移民や特定の人種の権利を侵害する」

 こうした顔認識のシステムでは、AI(人工知能)の学習過程で白人の成人男性の顔画像を多く使う。このため、それ以外の人々では誤認識する恐れがあると指摘されており、警察当局などの導入に反対の意向を示す人が多い。