新型コロナの特別定額給付金のオンライン申請では、申請内容を手作業で確認する自治体が出るなど混乱が広がった。写真は衆院予算委員会の質疑に臨む安倍晋三首相(写真:つのだよしお/アフロ)

 少子高齢化と人口減少が進むわが国の社会の質を維持し、さらに発展させるためには、データの活用による効率的な社会運営が不可欠だ。一方で、データ活用のリスクにも対応した制度基盤の構築も早急に求められている。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、これまでの経済、社会のあり方は大きく変わろうとしている。

 その中で、日本が抱える課題をどのように解決していくべきか。データを活用した政策形成の手法を研究するNFI(Next Generation Fundamental Policy Research Institute、次世代基盤政策研究所)の専門家がこの国のあるべき未来図を論じる。第5回は情報法制に詳しいKDDI総合研究所の加藤尚徳氏。(第1回第2回第3回第4回はこちら)

社会問題と化した給付金のオンライン申請

 デジタル・ディバイドとは「インターネットやパソコンなどの情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差」のことを指す。これまで、デジタル・ディバイドの問題としては、身体的・社会的条件(性別、年齢、学歴の有無など)の相違や国際間格差が議論されてきた。アフターコロナのこれからの時代においては、この情報格差は新たな様相を呈するかもしれない。

 NFIでは、次世代基盤政策について議論しているが、この次世代基盤には当然のことながら情報基盤が含まれる。現在、この情報基盤に関して、地域間の格差が生じようとしている。果たして、このまま情報基盤の格差を広げて良いのだろうか。

 コロナ対策として国から給付される特別定額給付金には、既に受け取った人もいるし、まだ申請用紙すら受け取っていないという人もいる。この違いはどこにあるのだろうか。

 今回の特別定額給付金には、2通りの申請方法がある。1つは申請書を郵送する方法、もう1つはマイナンバーを持つ人の専用サイト「マイナポータル」を利用したオンライン申請だ。オンライン申請は、早い自治体では5月上旬から申請を受け付けていた。紙の申請よりも、早くて、安くて、簡単と、まさにマイナポータルの利用の好例となるはずだった。

 ところが、このオンライン申請が社会問題となった。申請時の入力情報に誤りが多く、その確認作業に多数の自治体職員の手が必要となった。少しITに詳しい方であれば、「どうしてオンライン申請なのに手作業が必要なのだろうか?」「入力情報に誤りがあっても、自治体の他の情報で修正を行えるのではないか?」といった疑問が生じるかもしれない。そして、なぜITを使っているのに、紙の申請よりも手間がかかってしまうのか、それでは本末転倒ではないかと思うことだろう。