(城郭・戦国史研究家:西股 総生)
知識よりも楽しむこと
このところ、日本の城の歴史、戦国時代の城、陣屋などの話をしてきました。そこで、城を理解するためには、やはり背後にある歴史のことを知らなくては、と思った方も多いと思います。
歴史の勉強というと、学校の授業で習ったように、用語や人名、年号などを覚えゆくイメージがありますよね。でも僕は、歴史を知るために本当に必要なのは、知識や用語ではなく、原理を理解して楽しみ方を身につけること、だと思っています。この講座の第2回で、そんなことを書きましたし、以来ずうっと、そのスタンスでお話ししてきました。
なぜなら、原理を理解して楽しみ方を身につければ、知識はあとからついてくるからです。ほら、アイドルグループに興味をもつと、たくさんいるメンバーの顔と名前、キャラとか得意技とか、いくらでも覚えられるでしょう?
城や歴史も同じ。逆に、最初から知識、知識で詰め込んでしまうと、大切な原理みたいなものが、かえって見えにくくなってしまうことがあります。
たとえば、江戸時代の大名には、親藩、譜代、外様の種類があった、と教科書では覚えますよね。このうち、老中や若年寄といった幕府の要職につくことがてきるのは、譜代だけ。外様大名は、どんなに家格が高くても、財力があっても、頭がよくても、幕府の政治には関与できません。なんで、そんな意地悪するの? と、思ったことのある人、いませんか?