「家族」を描いた作品を多く手掛ける是枝裕和監督(写真:The Mega Agency/アフロ)

 緊急事態宣言が解除されても、依然として続く自粛ムード。在宅ワークに休校と家族が家のなかで共に過ごす時間が急増し、家庭内暴力や虐待の深刻化が懸念されている。たとえ暴力を振るわなくても、ストレスや不安で赤ちゃん返りする子どもに、「仕事があるのに」とついイラっとしてしまう親も少なくないはず。

 思い起こされるのは福山雅治が父として戸惑う姿を描いた『そして父になる』の一場面である。

様々な家族模様を描いてきた是枝作品

 ホテルのような高層マンションの一室で、体力と時間を持て余した男の子が恨めしそうに外を眺め、感情を爆発させる。面食らった父親は思わず、「静かにしなさい」と声を荒げてしまう。子どもは父親と外で遊びたかっただけだった。だが、子育てを妻に任せきりの彼には子どもとの距離感がわからない。

 上司から「家族のそばにいてやれ」と異動を命じられても、困惑するばかりの仕事人間。

「自分にしかできない仕事がある」とがむしゃらに働いてきた彼は、「負け組」と見下していた男から「父親は取り換えのきかない仕事だろ」と諭される。

 この『そして父になる』やカンヌ国際映画祭で最高賞パルム・ドールを獲得した話題作『万引き家族』など、是枝裕和監督はさまざまな家族を通じて、私たちがドキッとする名台詞を突き付けてくる。