5月24日、ジャカルタ郊外の住宅地にて、マスクを着用して祈りを捧げるムスリムの女性。ラマダン(断食月)が明けたこの日からムスリムは祝祭の期間に入る(写真:ロイター/アフロ)

(PanAsiaNews:大塚 智彦)

 インドネシアでは、コロナウイルスの感染拡大防止策として大規模社会制限(PSBB)を実施しているが、感染者数、感染死亡者数の増加に一向に歯止めがかからず、国民の間からは「効果も意味もないではないか」として、制限だらけの不自由な生活への不満が急激に高まっている。

 すでに首都ジャカルタに隣接する西ジャワ州などではPSBBを解除して、県や郡、市町村といった地方公共団体に対策を任せるところもでており、最も感染者数が多い首都ジャカルタでも何度か延長されている現在のPSBBが期限切れとなる6月4日を最後に解除して、通常の生活、経済活動、社会活動に復帰することが真剣に検討されはじめている。

 その一方でインドネシア全体のコロナウイルス感染者数は5月24日現在で、感染者数は2万2271人、感染死者数は1373人となっている。24日の1週間前である17日の感染者数が1万7514人、死者が1148人だったことから、直近の1週間で感染者数は約4700人、死者は約200人増加したことになる。

 また東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国中では感染者数こそシンガポールの3万1616人(5月23日現在)に次いで2番目だが、死者数に至っては2番目のフィリピンの863人(同)をはるかにしのぐ1373人は最悪の数字となっている。

政府発表の感染者数に疑問符も

 この統計の数字をどう見るかだが、ジャカルタ州のアニス・バスウェダン知事や西ジャワ州のリドゥワン・カミル知事などは以前から毎日発表される政府保健省の感染者、死者に関する数字について疑問を示しており、実際には発表数字の少なくとも3倍近い感染規模になっているとみている。

 医療関係者の間からは保健省の発表数字には、「コロナ感染検査の結果が判明する前の死亡」「症状が酷似している肺炎が死因の場合はコロナウイルス検査を実施しない」などの現在の統計の手法では実態を反映した数字にはならない、との批判がでている。