当初、リムパック2020では、アメリカ軍と陸上自衛隊の地対艦ミサイル部隊による地上から洋上の艦艇を撃沈する演習が、中国に対する警告として“目玉”になると考えられていた。しかしながら、地上部隊による演習ということで、中止に追い込まれた。

 なぜ「地対艦ミサイル演習」が目玉と考えられるのかというと、これまで空母中心主義に固執してきたアメリカ海軍が、東シナ海や南シナ海で強力な「A2AD」(接近阻止・領域拒否)戦力を手にするに至った中国軍と対峙するには、空母中心主義への拘泥を捨て去り、新たな戦略に転換しなければならなくなったからだ。

空母中心主義から「ミサイルバリア」へ

 アメリカの防衛にとって、対中国戦略の目的とは、何もアメリカ軍侵攻部隊が中国大陸に攻め込み中国軍を壊滅させることではない。中国海洋戦力が第一列島線を越えて西太平洋にまで優勢範囲を拡大してしまうことを阻止するのが、とりあえずの対中戦略目標なのだ。

第一列島線

 したがってアメリカ軍としては、有事に際して中国海軍に第一列島線を突破されない態勢を固めておかなければならない。これまでの戦略に従うと、横須賀を本拠地にする空母打撃群に増援の空母打撃群2~3セットを加えて、九州から台湾、そしてフィリピンにかけての第一列島線周辺で中国海軍や航空戦力を撃破するというものだ。空母中心主義に凝り固まっていた米海軍としては空母打撃群を“主役”に据えるのは当然であった。

 しかしながら、中国の各種A2AD戦力が極めて強力になったため、もはや第一列島線周辺では空母打撃群は“標的艦隊”になりかねない状況となってしまった。