最初から無理をしないハーモナイゼーションデザインを心掛ける
A社の場合、グローバルで管理すべき人材は「次世代のリーダーになる可能性がある者」でした。つまり、ある一定程度の役職(例えば日本の課長クラス)以上の社員のみが対象であるということを明確にしていました。したがって、課長クラスより下の社員については最初からポリシー・ハーモナイゼーションの対象外とし、各国・各地域の現地法人や拠点に彼らのマネジメントを委ねることとしました。
このように人材管理の範囲を絞り込むことができればハーモナイゼーションの難易度は下がり、成功確率は格段に上がることになります。ポリハーについて議論をしていると、ついついすべてをグローバルで共通化すべきだという論調になりがちですが、プリンシプルに立ち返り、無理のしない形で進めていくことを心掛けましょう。
次に課長クラス以上の役職の管理に関して、何をどこまで合わせていくか(=ハーモナイゼーションの深度)を検討します。検討の単位と深度のレベルについては図表1を、具体的なハーモナイゼーションの方向性については図表2をご参照ください。
繰り返しになりますが、重要なのは、なんでもかんでも共通化することを目指すのではなく、プリンシプルをベースとしてハーモナイゼーションの範囲や深さをしっかりとコントロールすることです。
もちろん、グローバルで完全に統合されたオンリーワンの制度によって人材マネジメントができるならば、これ以上に素晴らしいことはないでしょう。ただし、各国・各社の事情もある中で、一足飛びに完全統合を目指すことは賢明とはいえません。地に足のついたハーモナイゼーションデザインこそが成功への近道であることをご理解ください。
このハーモナイゼーションの方向性が合意できれば、次はこの方向性に基づいて、グローバル人事制度を設計していくことになります。グローバル人事制度設計の進め方や勘所については、次回お話しさせていただきます。
著者プロフィール EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社 IT系・会計系ファームを経て、現在はピープルアドバイザリーサービスにてタレント領域の責任者を務める。専門領域は、グローバルタレントマネジメント戦略策定、要員・人件費計画策定、プロフェッショナル人材育成など。組織・人事領域全般の幅広いプロジェクト経験を有し、人材戦略策定からIT導入までワンストップでおこなうコンサルティングが持ち味。2014~18年にかけてはタイを拠点に、東南アジアの日系企業向け人事コンサルティングに従事した経験から、当該地域における人材マネジメントにも明るい。 |