そこにはこう記されている。
「(国内の感染状況は)引き続き、持ちこたえていますが、一部の地域で感染拡大がみられます。諸外国の例をみていても、今後、地域において、感染源(リンク)が分からない患者数が継続的に増加し、こうした地域が全国に拡大すれば、どこかの地域を発端として、爆発的な感染拡大を伴う大規模流行につながりかねないと考えています」
「既に地域によっては軽症者や回復後の観察期間にある患者等によって指定感染症病床が圧迫されてきていること、死亡者数が増加傾向にある状況も鑑みると、専門家会議としては、欧州で起きているような爆発的な感染拡大の可能性や、それに伴う地域の医療提供体制が受けるであろう影響の深刻さについても、十分考慮しておかなければならないと考えています」
この危機感がなかなか国民に伝わっていないようである。「日本の感染者はまだたった1000人、死者は数十人じゃないか」と油断していると、米国のように感染者数が一気に爆発的に増加して、イタリアのような「医療崩壊」状態を招きかねない。
気付いたときには制御できなくなる
なによりも深刻なのは、感染ルートを追えない感染者が増えていることだ。専門家会議によると、いま日本では、感染源を追えないクラスター(患者集団)が散発的に発生しているという。きわめて不気味な兆候と言えるだろう。
感染源がわからないクラスターが全国に増えていくと何が起きるのか。
「どこかで感染に気付かない人たちによるクラスター(患者集団)が断続的に発生し、その大規模化や連鎖が生じ、オーバーシュート(爆発的患者急増)が始まっていたとしても、事前にはその兆候を察知できず、気付いたときには制御できなくなってしまうというのが、この感染症対策の難しさです。もしオーバーシュートが起きると、欧州でも見られるように、その地域では医療提供体制が崩壊状態に陥り、この感染症のみならず、通常であれば救済できる生命を救済できなくなるという事態に至りかねません」(「専門家会議」)