新型コロナウイルスの感染が広がり人が消えたドイツ・フランクフルト。3月第4週にメルケル首相が「戦後最大の試練だ」と発言してから出歩く人が一気にいなくなった(永山さん撮影、以下同)

(姫田 小夏:ジャーナリスト)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界で猛威を振るうなか、欧米の国々で中国人に対する差別、攻撃が強まっている。

 最近、トランプ大統領が「チャイナウイルス」という言葉を使ったが、これが拍車をかけた。英国では中国人留学生が10代の少年から「チャイナウイルス、帰れ」などの罵声を浴びせられた。

「お前はこれを食べるんだろ?」

 ドイツでもこうした差別は存在する。ケルンで暮らす中国人留学生はドイツ人の子どもたちに「コロナだ、気持ち悪い!」と騒がれたことがあるという。

 その場では耐えるしかなかった。「言い返したり、やり返したりしたら強制送還されてしまうかもしれません。悔しいけれど無言で通り過ぎるしかありませんでした」と語る。

 彼が不快な思いをしたのは、それだけではない。熱帯魚の販売店を訪れていたときのことだ。生餌コーナーに、ウヨウヨとうごめくミルワームやケースに入れられた無数のコオロギがいた。すると後ろから「お前はこれを食べるんだろ?」とドイツ人の子どもからからかわれたのだ。

「僕は食べないけど、君は食べるのかな?」と中国人留学生が聞き返すと、ドイツ人の子どもはバツの悪そうな顔をして去っていったという。

 ドイツの一部のマスコミは、「新型コロナウイルスの発生は、コウモリなど野生動物を食べる中国の習慣が原因」と報道している。ドイツ人の子どもはそうした話を聞きかじって、中国人の食習慣をからかってきたのだろう。