(PanAsiaNews:大塚 智彦)
インドネシアのジョコ・ウィドド政権にとっての喫緊の治安政策かつ人権課題とされている「パプア問題」。この重要課題について、治安担当の閣僚が中心となって、パプアの統治強化を企図した新法整備や治安部隊増強などが着々と進められている。
インドネシアでは現在、初めてインドネシア人の新型コロナウイルスの国内感染が確認された3月2日以降、感染者が増加し続けている。11日にはバリ島を訪れていた英国人女性観光客が新型コロナ肺炎による初の死者となったことが伝えられており、保健当局を中心に官民をあげて感染対策で大わらわの状況だ。
そうした中でもパプア現地からは治安悪化の状況が少しずつだが伝わってきており、内務省や国軍・国家警察など治安当局は、次なる治安対策を打とうとしている。
パプア問題の歴史的背景
ここでパプア問題を少しおさらいしておこう。
インドネシアの東端に位置する世界で2番目に大きな島・ニューギニア島の西半分を占めるのが、インドネシア領のパプア州と西パプア州である。島の東半分は隣国・パプアニューギニアだ。
インドネシア領のパプア州・西パプア州とお隣のパプアニューギニア独立国は、民族、言語、文化は同じメラネシア系だが、かつて西半分はオランダ植民地、東半分はドイツとイギリスの植民地(その後オーストラリアが継承)と分割統治されていた歴史的経緯がある。東側が1975年に独立を果たす一方で、西側もオランダからの独立を宣言するもののインドネシア軍による軍事侵攻を受け、1969年に実施された住民投票の結果としてインドネシアに併合され、現在に至っている。
ただ、この時の住民投票は約80万人のパプア人の約1000人だけを対象にしたインドネシア政府による意図的なものとして多くのパプア人は反発、武装抵抗組織「自由パプア運動(OPM)」など結成され、現在も小規模ながら抵抗運動を続けている。