なお「これ以上開示しない、すでにあるもの(フジテレビのスクリーンショット)で判断しろ」と言うのなら、両方とも証書として無効である。

 なぜなら卒業証明書のほうは、最重要要件である大学のスタンプの印影がいずれも判読不能だからだ。筆者はカイロ大学文学部の別の教授や日本の援助機関に管理職として勤務するカイロ大学工学部出身者に小池氏の卒業証明書を見せたが「これでは卒業証明書として通用しない」と言われた(もちろん面談記録は取っている)。また文章が男性形で書かれており、4人の署名者のうち2人しか署名が確認できず、収入印紙が逆さまに貼られ、写真もピン留めである等、他の正式な卒業証明書と異なる不審点が多数ある。

 卒業証書のほうはさらに怪しい。スクリーンショットでは、学部長の署名が見えない。また証書の右下の登録番号もなく、それ以外にも卒業証書として複数の要件を欠いている。なおすでに指摘した通り、卒業証書は裏面も見ないと最終的な真贋は判断できない。このスクリーンショットだけで判断しろというのなら、100パーセント無効である。

カイロ大学を卒業していないという同居女性の証言

 小池氏の学歴詐称疑惑を裏付ける重大な証拠はもう一つある。「文藝春秋」2018年7月号に掲載された『小池百合子「虚飾の履歴書」』(筆者・石井妙子)だ。カイロで小池氏と同居していた日本人女性(以下「同居女性」)が、小池氏が1976年5月の進級試験に合格できず、その時点で4年生にもなっていなかったので追試も受けられなかったこと、卒業できないまま日本に帰国したにもかかわらず、カイロ大学文学部社会学科首席卒業という肩書を使い始めたこと、卒業したと日本で嘘をついてきたのをケロっとして認めたことなどを証言している。この証言は同居女性の手帳の日記と母親にあてた多数の手紙によって裏付けられている(手紙に日付の消印があれば裁判で証拠能力を持つ)。

 卒論に関する事実に反する答弁、卒業証書類の公開を頑なに拒否する態度、物的証拠のある同居女性の証言、さらに筆者が別の記事で指摘した「とてもよい面会」を「とても美味しい面会」と言い間違える初心者レベルのアラビア語などを考慮すれば、小池氏がカイロ大学を卒業したことを信じろというのは無理な話である。

 学歴詐称(公職選挙法違反)や有印私文書偽造・同行使は、知事辞任に値する犯罪である。そうでないと言うのなら、まずは卒業関係書類を都議会に開示し、その上で、学業実態があることを証拠にもとづいて説明すべきだろう。それができないなら、政治家を辞めるしかないと筆者は考える。