これまで日本では「学習」というと机に向かってするものがイメージされてきました。しかし急速なデジタル化やAIの発展など、近年の激しい環境変化は、社会における「学び」の姿を変えています。
2018年には文部科学省が学習指導要領を改定し、より主体的・対話的で深い学びを実現する「アクティブ・ラーニング」を提唱しました。不確実な時代において未知の状況に対応できる判断力を養うことや、人生100年時代に生涯にわたって学び続けるちからを獲得することが狙いです。
企業でも従来の教育、研修のあり方が変わりつつあります。2020年代の能力開発はどうなっていくのか、実際の人事の現場での変化をもとにレポートします。
テクノロジーの進化でOJTが変わる
一般的に人材育成の手法には、大きくOJTとOff-JTがあります。OJTは現場での経験や上司からの指導を意味し、Off-JTは集合研修など職場から離れた場所で行う教育を意味します。最近の人事関係者の間では、人材育成において「OJT(経験)」と「上司とのかかわり(薫陶)」と「Off-JT(研修)」が70:20:10の比率が望ましいと言われています。
これまでの人材育成といえば、一括の集合研修が中心でした。しかし、徐々に仕事での経験こそが人の能力を向上させることがわかってきたため、OJTの役割がますます注目されています。特に最近は日本企業のグローバル化が急速に進み、日本で成長実感を得られる経験が少なくなりつつあります。日本で集合研修をやっても海外での仕事に活かせない、そんな状況もあり得るようになってきました。
さらに最近では学びのテクノロジーが進化し、OJTをより効率的に実施できるようになりました。タレントマネジメントシステムやラーニングマネジメントシステム(LMS)を使うことで、個々の社員のスキルを見える化し、それに応じた指導ができるようになりつつあります。
一部のLMSでは、コンテンツ作成がとても簡単になり、スマホやPCから撮影したビデオや画像に音声を吹き込んですぐ共有できるようになっています。こうしたツールを使用すれば、上司や指導者が不在の時でもスマホやPCで業務内容や作業手順を学びながら仕事に取り組むことができます。
またAR技術やVR技術を活用したOJTのソリューションも少しずつ増えてきました。AR技術を活用すれば、例えば工場での作業手順が端末に表示され、リアルタイムでどこをどう作業すればよいのかがわかります。またVR技術では、接客対応や作業現場での対応を実際に体験しているかのような没入感の強い学びを得られます。
こうしてOJTの重要性が再認識されるとともに、テクノロジーの進化により学びがリアルタイム化、高度化しつつあるのです。