もう一つ、金正恩委員長の大きなストレスの元になっていると思われるのは、北朝鮮内でささやかれているある噂だ。現在、多くの人々が集まるジャンマダン(農民市場)では、金委員長が、当時北朝鮮のナンバー2とされていた張成沢(チャン・ソンテク)氏に続いて、その妻で、実の叔母でもある金敬姫(キム・ギョンヒ)氏を殺したという噂が広まっている。

 1月25日、三池淵劇場での記念公演に金敬姫・元秘書を復活させたのも、こうした噂をかき消すためだったのかもしれない。

叔母・金敬姫氏殺害を知る関係者も皆殺し

 筆者は2月7日付のJBpressで、金敬姫氏は甥である金正恩委員長の命令によってすでに毒殺された、との記事を書いた。

(参考記事)6年ぶりに登場の金正恩の叔母、その影武者説を追う
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59259

 その後、さらに詳しい証言を得たので、それも含めて改めてこの件を説明しておきたい。

 ナンバー2である張成沢氏を処刑しようとする北朝鮮指導部の動きを察知した金敬姫氏はこれに強く反対したが、聞き入れられなかったため、金敬姫氏は朝鮮労働党組織指導部に公式に提案書(抗議文)を提出した。

 その提案書には、「私の意見は、張成沢部長に罪はあるが、処刑はできない。革命化区域(思想の再教育と強制労役などをさせる施設で、一定期間の収容後は解放される)に送ることで済ませよう」と記されていた。

 これを受け取った組織指導部は、金敬姫氏の意見を受け入れ、同様の報告書を党上層部に提出したのだが、金委員長はこれに激怒。反体制派の摘発を担う国家安全保衛部に命じ、張氏を処刑してしまった。

 夫・張成沢が無数の機銃掃射により処刑され、その遺体も火炎放射器で無惨に焼き消された後、金敬姫氏は平壌郊外の別荘(招待所)で療養を兼ねて治療を受けていた。だが、夫の処刑に我慢ならなかった金敬姫氏は、その後も怒りを抑えきれず、金委員長に対する酷い悪口を続けた。これが最高指導部に報告され、金敬姫氏まで毒殺されてしまったという。

 ところが、事件はそこで終わらなかった。