安全保障は単体では実現できない

 ひるがえって日本である。仮に安全保障という分野であっても、中国製品の排除が外交交渉の一環ならば、日本側も相応のメリットを追求しなければ意味がない。

 アジア各国は米国の禁輸措置と通信インフラ整備との間で揺れているわけだが、ここで日本製品を使うという選択肢があれば、米国への配慮から一気に日本製品の導入に流れたはずであり、日本の利益と中国の権益排除という2つの果実を獲得できた。だが、困ったことに日本の通信機器メーカーはファーウェイに対抗できるだけの製品を開発できておらず、アジア各国にとっては、米国に配慮して日本製品を使うという選択肢が存在していない

 先ほどファーウェイは基地局市場で4割のシェアを持つと述べたが、残りはノキア、エリクソンといった欧州勢と韓国サムスンが占めており、日本メーカーの世界シェアはほとんどゼロといってよい状況だ。

 日本の携帯電話会社は、5Gの整備において当初、ファーウェイ製品の活用をかなり前向きに検討していた。だが、米国のファーウェイ排除の動きが本格化したことから、各社はノキアやエリクソンへの切り換えを進めてきた。つまりファーウェイ排除で得をしたのは欧州メーカーということになる。

 最大手のNTTドコモだけは、旧電電公社時代からの経緯もあり、日本メーカーからの調達にこだわっていたが、結局はノキアからも調達する方針を明らかにしており、日本メーカーのシェアはさらに低下する可能性が高い

 皮肉なことだが、経済的な面だけに限定すれば、今回の禁輸措置で大きなマイナスを受けたのは日本だけというのが現実なのである。

 安全保障というのは、経済や産業などあらゆる力を総合して実施するものであり、単体で機能するものではない。日本は米国と異なり、軍事大国、経済大国ではないので、産業競争力を駆使した安全保障政策が極めて重要となる。

 日本は過去20年間、現実から目を背け、現状維持を最優先させたことで、企業の競争力を著しく低下させてしまった。そのツケは極めて大きいということが、今回のケースからも見て取れる。