また前述のジャーナリスト、ダリヤ・シェブル氏に確かめたところ「国立大学と私立大学はまったく別の体系で、カイロ・アメリカン大学で仮に10年間勉強し、単位を取得しても、カイロ大学では1年生から始めなくてはならない。これがエジプトの法律である」という答えだった。他大学で1年も終えていない(単位を取得していない)人間が編入を許されることはまったくあり得ない。

 小池氏は関西学院大学には最大で半年程度しか通っておらず、小池氏が籍を置いたカイロ・アメリカン大学のCASAは単なる語学学校で、単位や学位を取得することはできない。もし多くの日本人が証言するように実際に小池氏が1973年に2年生に編入していたとすれば、それ自体が不正編入以外の何物でもない。それは、最初から卒業資格がなかったことを意味する。

入学資格の有無について小池氏は無回答

 米国では2019年に、有名人などが自分の子供のSAT(大学進学適性試験)の点数を上げて、有名大学に不正入学させる組織に対し、チャリティを装って賄賂を払った事件で51人が起訴されるという事件が起きた。そのうちの1人でテレビドラマ『デスパレートな妻たち』に出演した女優のフェリシティ・ハフマンは14日間の実刑判決を受け、去る10月にカリフォルニア州の女性刑務所に収監された。ハフマンの娘ソフィアは大学には入学しておらず、SATを再受験するようだと報道されている。スタンフォード大学は同組織に親が650万ドル(約7億円)を支払い、スポーツ推薦枠を悪用して入学しようとした中国人学生を、提出書類に不正があったとして退学処分にした。

 エジプトの国立大学への編入条件をまったく満たしていないと思われる小池氏に対して、入学したのは1972年か1973年か質問状を送ったが、回答はなかった(小池氏への質問と回答の全文は第6回に掲載予定)。

 なおカイロ大学はアラブ世界では名門の大学で、医学部、工学部、政経学部などには優秀なエジプト人学生が多い。ただし世界的な評価はさほど高くはない。

 英国のQuacquarelli Symonds社が発表している世界大学ランキング(QS World University Rankings)の2020年版では世界521~530位、エジプト国内では2位で、熊本大学、長崎大学と同程度である。エジプトの1位はカイロ・アメリカン大学(私立・米国系)で世界395位(神戸大学と同順位)、3位はアイン・シャムス大学、アレキサンドリア大学、アシュート大学(いずれも国立)で世界801~1000位である。