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 政府が進める働き方改革には、長時間労働の改善や年次有給休暇の取得義務化にならんで「同一労働同一賃金」の制度が2020年4月(中小企業は2021年4月)から適用が開始されます。今すぐの話ではありませんが、後になって慌てないように準備を進めておくとよいでしょう。では、具体的にどう進めていけばよいのかについて解説していきます。

そもそも「同一労働同一賃金」とは?

 同一労働同一賃金とは、同じ仕事をする場合には、正社員とアルバイト、パートなどの区別をすることなく同じ賃金を支払ったり、バランスの取れた給与体系にしましょう、というルールのことです。

 例えば、販売の部署で職務の内容が同じなのに、正社員のAさんとパートのBさんでお給料が違うと、ルール違反になる可能性があるのです。

 通常、給与体系で規定されているのは、「基本給」、「通勤手当」、「精皆勤手当」、「賞与」などですが、これらは「どんな仕事をしたか」という要素があまり反映されていませんので、「同一労働同一賃金」の運用への落とし込みが難しい場合があります。

 したがって、運用するための下準備として実際に行われている業務を棚卸してみて、従業員の方がどのような業務を行っているのかを明確にすることが必要になります。

 ここで、「販売」の業務を例にとってみましょう。一口に販売と言っても、実際に行っている業務は多岐にわたりますので、まずは「商品の発注業務」と「接客業務」に分けてみます。

〈商品の発注業務〉
・商品の在庫のチェック
・商品の発注
・商品の検品
・伝票処理  
 
〈接客〉
・レジ業務
・商品説明
・クレーム対応 

 このように業務の内容をできるだけ具体的に、細かくリスト化していけることとよいでしょう。また、これらの業務にレベル差がある場合は、1級、2級などのようにランク付けをしてもかまいませんが、ランクの差がどのようなものなのかもきちんと説明できるようにしておきましょう。

 次に、販売の業務に従事している全員について、誰がどれだけの業務を担当しているのかを洗い出します。もし正社員であるAさんとパートのBさんが同じだけの業務を行っていた場合は、支払う賃金をそろえる必要が出てくるというわけです。。

 ですが、正社員のAさんが販売上のノルマを課せられていて目標が未達成の場合にペナルティを受けるがパートのBさんにはノルマがない、また、Aさんには転勤の可能性があるがBさんには転勤がない、といったように責任の範囲や配置の変更の範囲が異なる場合は、同じ賃金ですとかえって不合理になりますので、そろえる必要はありません。