こうした話をすると、年配の女性から「私は独りで子育てをした」という声が出てくることがある。非常に苦しい時期を乗り越えてきたことは素晴らしいが、「我慢比べ」では改善がちっとも進まない。それに、昔と今とでは、子育て環境に大きな変化がある。

子育て中の母親に対するサポート体制整備は社会的使命

 ひとつには、「子育て世代の人口密度の低さ」だ。私のような団塊ジュニアの世代は、近所に同世代がウジャウジャいた。近隣のお母さんたちが協力して、当番で子どもたちを預かるようなことも行われていた。「今日は何々ちゃんのお家」に数人の子どもたちが集まり、一緒に遊んでいた。そういうことも行われることで、子育ての負担を交代で軽減することも可能だった。子育ての悩みをお母さん同士で相談することもできた。

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 しかし今や、少子化で子育て世帯が地域にポツンと孤立していることが多い。同じ子育てママとして悩みを共有したくても、近所にいなかったりする。助け合いたくても、距離がありすぎて無理。赤ちゃんは、首がすわるまでは危険なので外出は極力控えなければならない。ご近所に子育て世帯があるなら交流は可能だが、近所にいない場合、交流はネット上に限られる。子育て世帯同士の助け合いは、したくてもできない。

 また、現在は故郷から遠く離れた場所に転勤になる人が多い。地縁血縁がまったくない地域で子育てしなければならない人も多い。昔は商店街も元気で個人商店も多く、自営業のご家庭も多かったが、現在はほとんどが勤め人で転勤だらけ。そうした社会状況の変化が、子育て環境の変容にも影響している。現在の子育ては、ご近所の助けもなかなか得にくい、核家族だけの子育てになりがち。

 しかも、子育てに無理解な社会人(主に男性)が多く、「嫁さんが育児に専念しているのなら、お前は深夜まで残業できるだろう」という上司がまだまだ生存している様子。これだと母親は、父親の助けも得られない、ワンオペ育児になりかねない。

 24時間の「目」がないと、赤ちゃんの安全を図れない。その負担をどう分担し、軽減するか。それは、次世代を育成するという社会的使命として、私たちが真剣に考えなければならない課題だろう。