企業の論理だけではなく、候補者ニーズを踏まえた採用活動が必要になる
「これまでの日本の新卒一括採用は、採用する企業側にとっては労力が小さく、非常に効率的な制度でした。しかし、今後より優秀な人材を獲得していくためには、企業の論理だけで採用を行うのではなく、候補者の立場も踏まえた活動が必要になります。企業にはこれまで以上に大きな受け皿『=労力』を準備して、採用に臨む姿勢が求められるようになるでしょう」
さらに「採用チャネルの多様化が進むことで、企業が不合格通知を出すように、学生からの内定辞退も今後増えてくるでしょう。内定辞退を減らすためには、企業側が自社の魅力を正確に伝えるとともに、自社にマッチした人を正確に定義し、そうした候補者に絞ってアプローチしていくことが必要だと考えています」と、ここで採用活動にマーケティング思考を当てはめた『採用マーケティング』の必要性に言及した。
採用マーケティングによって、企業がアプローチしたい人材にとって魅力に感じるだろう環境を整備し周知できる。また、複数のチャネルに自社の情報を発信することで、候補者が自社を発見しやすくなる。
鵜沢氏も「単純に『優秀そうだから』という理由で、他社に相乗りするような形で新卒者への内定を乱発する採用手法は限界にきていると思います。自社が求める人材を正確に定義し、そのための人材を採用することに注力しない限り、企業にとっても学生にとっても不幸なミスマッチを減らすことはできないでしょう」と持論を述べた。
また、「EYでは学生に職業体験的なインターンを課すのではなく、インターンの立場でありながら、1~2年の間プロフェッショナルの一員として有給で職務を経験させ、そのまま採用することもあります。この場合、職務経験を積んだ学生は、他の学生たちの1、2個上にある肩書からキャリアをスタートすることになります」と、鵜沢氏は海外EYで行われるインターン事例も紹介した。
こうした事例から、優秀人材を採用するために新卒時から能力や経験に応じた個別の処遇を用意するなど、受け入れる企業側の環境整備が進んでいる様子をうかがい知ることができる。小野氏は、「この動きは日系企業にも波及し始めており、専門性が求められる職務では21歳で管理職として採用された例もあります」と語った。
今回の発表では、就活ルールの変更により、日本企業が長らく続けてきた新卒一括採用という慣例そのものが崩れていく可能性が示された。就活ルール変更を機に、自社が必要とする人材の再定義を行い、そうした人材を採用するためのベストな手法について、今一度考えてみる必要があるのではないだろうか。
EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社
ピープル・アドバイザリー・サービス リーダー/パートナー
鵜沢 慎一郎(うざわ しんいちろう)
EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社
ピープル・アドバイザリー・サービス マネージャー
小野 祐輝(おの ゆうき)
著者プロフィール
HRプロ編集部 採用、教育・研修、労務、人事戦略などにおける人事トレンドを発信中。押さえておきたい基本知識から、最新ニュース、対談・インタビューやお役立ち情報・セミナーレポートまで、HRプロならではの視点と情報量でお届けします。 |