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  2019年7月10日、東京ミッドタウン日比谷にて、EY アドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社(以下EY)主催による「就活ルール変更に関する意識調査と将来の採用トレンド」に関する記者発表会が行われた。昨年10月、経団連は新卒採用活動の解禁日や内定日などを定めた既存の就活ルール(採用選考に関する指針)を2021年卒から廃止し、以降の就活ルール策定・運用に関しては政府に主管を委ねると発表した。EYでは、こうした就活ルール変更の動きに伴い、企業が予定する対応方針と学生側からの期待・要望を調査。それらの差異に関する傾向を分析し、日本における採用の未来に関する考察をレポートとして公開した。

ルール変更に伴い、経団連加盟企業の約4割が採用手法の変更を検討中

 就活ルールは長らく経団連が主導していたが、2021年卒より政府が主導することになった。これにより、学生の就職活動や企業の新卒採用にどのような影響があるのか注目を集めている。

 これを受けてEYは、2019年2月8日~22日にかけて学生328名(就活未終了者196名、就活終了者132名)、企業325社(経団連加盟企業127社、経団連非加盟企業198社)を対象に「就活ルール変更に際する意識調査」を目的としたオンラインサーベイを行った。今回の発表は、この結果をまとめたものだ。

 冒頭、EYの人事コンサルティング部門で責任者を務めるピープル・アドバイザリー・サービス リーダー・パートナーの鵜沢慎一郎氏が登壇。「EYは全世界13,000人の人事コンサルタントが所属している、世界最大級の人事コンサルファームです。2018年にはユニバーサム(米調査会社)が学生向けに行った『世界で最も魅力的な企業ランキング』でも世界3位の評価を得ており、魅力的な人材が集う場所になっています。今回の発表は、自社のノウハウも含めて、日本固有の就活ルール変更について調査と考察を行ったものです」と挨拶した。

 調査結果と考察の発表は、EYのピープル・アドバイザリー・サービス・マネージャーである小野祐輝氏が担当。学生、企業各々に向けて調査を行い、まず「既存の経団連主導による就活ルールについて、どれほど理解しているのか」を明らかにした。これによると、これまでの就活ルールを「正しく理解していた」と回答した学生は19%、経団連加盟企業は56%であった。また、経団連非加盟企業では25%が理解していたものの、31%が「理解していなかった」と回答。小野氏は「学生、企業ともに就活ルールへの理解や関心は低い」と説明した。
 
 では、就活ルールについて学生、企業はどう考えているのだろうか。「現在の就活ルールの維持を希望しますか」という質問では、経団連加盟企業の28%が「ルールを廃止してほしい」と回答している。就活ルールに縛られない採用活動を行ってきた経団連非加盟企業については、同じ質問に対し54%が「どちらでも良い」と回答した。なお、学生は就活ルールの改廃に関して特に意見を持っていない。

 小野氏は「学生・企業ともに、そもそもの就活ルールを正しく理解しているわけではない。経団連加盟企業からも既存のルールを変更したいという回答が寄せられており、就活ルールの形骸化が進んでいる」という見解を示した。

 次に、就活ルールの変更に対し、企業はどのように対処しようとしているのかが示された。「就活ルール変更に合わせて採用手法を変えるか」という企業への質問に対し経団連加盟企業の43%が「変える予定である」と回答。具体的な採用施策に関しては、これまで制限されていた「採用時期の早期化」(39%)や「通年採用」(39%)と回答した企業が「採用チャネルの多角化」(46%)に次いで多くなっている。小野氏は「就活ルールは時期を縛るものだったので、これまでルール内にあった経団連加盟企業の4割が時期の縛りに反発して、『早期化』『通年化』が上位に挙がったのではないか」と考察した。

 学生も企業と同じく、採用時期の早期化、通年化を望んでいるようだ。学生に対する「就活ルール変更で期待すること」という質問では、「時期に縛られない通年採用」(43%)、「内定時期の早期化」(35%)、「柔軟な働き方ができる企業とのマッチング機会増加」(34%)という回答が順に上位を占めている。

 学生側のこうした傾向について、小野氏は「予想ではあるが」と前置きしながら「これまでの経緯もあり、自由化という言葉から時期の早期化を想像する学生が多いのだと思われます。また、早く安定して『無い内定』の状態から逃れたいという心理も想像できる」と述べ、これらデータから「就活時期に関する回答では企業と学生、両者の思惑が一致している」という分析結果を示した。