キャリア採用の求人が空前の「売り手市場」と呼ばれて久しい。HR総研では、キャリア採用の動向調査を行なった。求人難が続く中、企業はどのような計画を立て、どのような取り組みを行なっているのか? 年間計画、利用しているサービス、どこに課題を感じるかまで、現場の「生の声」をレポートする。
※ここでいう「キャリア採用」とは、単なる「中途採用」とは異なり、「生産ラインや建設現場スタッフ等の現業職を除く基幹職の中途採用」と定義した上で実施した。
85%の企業がキャリア採用を実施
2018年度のキャリア採用の計画人数を聞いたところ、「採用予定なし」とする企業は15%にとどまった。逆に言えば、85%の企業がキャリア採用を実施していることになる。採用計画の人数区分で最も多いのは「1~5名」で39%と4割近くにも及ぶ。次いで、「6~10名」18%、「11~30名」16%が続く。採用計画数は、当然のごとく従業員規模に応じて異なってくる。「1~5名」の割合を見てみると、300名以下の中小企業では56%と半数を優に超えるのに対して、301~1000名の中堅企業では28%、1001名以上の大企業では16%にとどまる。大企業で最も多いのは「11~30名」の26%だが、次に多いのは「101名以上」の18%となっている。実に2割近い企業が年間で「101名以上」のキャリア採用を計画している。
[図表1] 2018年度の「キャリア採用」採用計画数
大企業の3割以上が前年よりも採用増
採用計画人数の前年度との比較を聞いたところ、すべての企業規模で「増えている」が「減っている」を大きく上回る結果となった。「減っている」とする企業は8~10%なのに対して、「増えている」とする企業は、中堅企業と中小企業でともに23%、大企業では32%と3割を超えている。新卒採用市場の求人倍率も年々高まりを見せているが、キャリア採用市場においても求人意欲の衰えは依然として見えてこない。
[図表2] 2018年度キャリア採用計画数の増減
2018年度のキャリア採用計画を達成している企業は2割以下
1年間のキャリア採用計画の1月末時点での達成率を聞いたところ、「すでに達成した」企業は中小企業が23%で2割を超えているものの、大企業で18%、中堅企業にいたってはまだ12%にとどまっている。中小企業の場合には、後述するように「1~5名」程度の採用が多く、他の企業規模よりも進捗している企業が多いものと推測される。中堅企業は、「達成した」企業だけでなく、「80~100%未満」の企業においても18%と他の企業規模よりも遅れをとっており、新卒採用と同じように採用市場においては最も苦戦を強いられている。特に、メーカーの中堅企業は「すでに達成した」「80~100%未満」の企業ともに8%にとどまっており、全カテゴリーの中で最も苦戦している。従来通りのやり方で漫然と採用活動を続けるのではなく、採用手法そのものの見直し、企業や募集職種の魅力や打ち出し方の工夫、応募者や社員に魅力的な制度の充実、退職者の抑制(リテンション)対策など、多方面の施策を有機的に展開していくことが求められている。
[図表3] 2018年度キャリア採用計画の1月末時点での達成率
「自社にない知識・スキルの獲得」に積極的な大企業
キャリア採用を実施する最も大きな目的を聞いたところ、すべての企業規模で「欠員補充」が最多となった。特に中堅企業では、55%と半数以上の企業が「欠員補充」を選択している。中堅・中小企業では、「欠員補充」に次いで「増員」を挙げる企業が多く、この2項目で9割近くを占めている。一方、大企業では、「欠員補充」も42%で他の企業規模よりは少なくなっており、次いで多いのは「増員」(24%)ではなく、「自社にない知識・スキルの獲得」で33%と3分の1の企業が選択している。新分野への積極的な展開を図っている姿が垣間見える。中堅・中小企業では、それぞれ6%、10%にとどまっており、新分野への展開にチャレンジするのではなく、既存事業での生き残りに注力していると推測される。
[図表4] 「キャリア採用」実施の最も大きな目的