キャリア採用手法の定番は「人材紹介」と「転職サイト」だが…
キャリア採用で利用している手段やサービスを聞いたところ、トップは「人材紹介」(73%)で、すべての企業規模で7割を超えている。2位の「転職サイト」(71%)は、大企業では79%と「人材紹介」(76%)を上回る利用率となっている。「転職サイト」からターゲット層からの応募を集められる職種の募集であれば、「人材紹介」よりもコストを抑えることができ、特に複数人数を採用するのであればその差はさらに大きくなる。キャリア採用における定番といえる手段・サービスはこの「人材紹介」と「転職サイト」で、企業規模による利用度の差もそれほど大きくはない。
次の「自社ホームページ」(47%)からは、全体で利用率が5割を下回っているほか、企業規模による利用率の差があるものが多い。例えば、「自社ホームページ」では、大企業の61%が活用しているのに対して、中堅・中小企業では4割前後にとどまる。「リファラル採用(従業員からの紹介)」も大企業では52%なのに対して、中小企業では35%にとどまっている。
一方、「ハローワーク」は逆で、中小企業では52%と半数以上の企業が利用しているのに対して、大企業では27%にとどまっている。多分、大企業の場合、それも応募の実効を期待してのものではなく、地区の「ハローワーク」との関係性維持のために、書類だけ提出しているのが実情ではないだろうか。
[図表11] キャリア採用で利用している手段・サービス
採用成果につながる「リファラル採用」と「転職フェア」
利用している手段やサービスの中で、成果が認められるものを選択してもらったところ、利用率の高い「人材紹介」(74%)や「転職サイト」(62%)も上位にはランクインしているが、トップは「リファラル採用(従業員からの紹介)」の81%で、8割以上の企業が成果を認めている。中小企業では87%と9割近い企業が評価している。
紹介者が入社に至った場合、従業員に紹介インセンティブを何らかの形で設定することが通例ではあるが、「人材紹介」の紹介手数料と比較すれば何分の1程度のコストに過ぎないし、最終的に入社に至らない限りコストが発生しないことを考えれば、企業にとって極めて効率的な手法である。また、従業員は紹介者のスキルや性格等を十分認識した上で企業に紹介しており、紹介される側も従業員から会社の風土や特徴の説明も受けているため、マッチング率は高く、入社後のミスマッチも低くなる傾向がある。
今回注目すべきは、3位に入った「転職フェア」である。大企業の75%が成果ありとしたほか、中堅・中小企業も67%が成果ありとしている。サービスの利用率では全体で8%とそんなに高くないものの、利用している企業での評価は極めて高い。応募候補者に対して企業や募集職種の魅力を直接伝えることができることで、正式応募への誘導率や内定後の受諾率等の点において優れているということなのだろう。
[図表12] キャリア採用で利用している手段・サービスのうち、成果が認められる手段・サービス
今後利用が高まる「リファラル採用」と「ダイレクトソーシング」
これまで見て来たように、キャリア採用手法の定番は「人材紹介」と「転職サイト」であるが、今後、利用が高まると思う手段・サービスを聞いたところ、1位は「リファラル採用(従業員からの紹介)」(53%)、2位には「ダイレクトソーシング(転職者DB)」が入り、定番の「人材紹介」(34%)、「転職サイト」(30%)を上回る結果となった。上位の2つについては、企業規模による差異も少なく、どの規模の企業もそう考えているということになる。
「リファラル採用(従業員からの紹介)」の利用については、現状は大企業が先行している感があるものの、中堅・中小企業も関心は強いようである。「ダイレクトソーシング(転職者DB)」の現状は、転職者データベースから求める人材を見つけ出し、一人ひとり個別にオファーメールを配信していくという手間のかかる業務が必要になってくる。だが、定番の「人材紹介」と「転職サイト」だけで採用が思うようにできていない以上、新しい手法を導入していかざるをえないと考えているようである。
[図表13] 今後、利用がより高まると思われるキャリア採用の手段・サービス
新卒同様、キャリア採用でも2強を形成する「マイナビ」と「リクナビ」
「転職サイト」や「ダイレクトソーシング(転職者DB)」など、web上でのサービスを利用している企業を対象に、現在利用しているサービスを聞いたところ、トップには転職サイトの2強「マイナビ転職」と「リクナビNEXT」がともに43%で並んだ。ただ、どちらも大企業と中堅企業での利用率は高いものの、中小企業での利用率はやや低くなっている。
これに対して、3位にランクインした「Indeed」(38%)は、大企業と中小企業でそれぞれ41%、42%と高くなっている。中小企業では、「Indeed」が最も利用率が高いwebサービスとなっている。4位の「doda」は、全企業規模で31%の利用率となった。「ダイレクトソーシング(転職者DB)」の代表サービスである「ビズリーチ」は、全体では19%であるものの、大企業では34%が利用しているのに対して、中小企業では9%にとどまるなど、企業規模による差が大きい。
[図表14] キャリア採用で利用しているwebサービス
人材要件を分かりやすい言葉で原稿化すべき
「人材紹介」を利用している企業に、求人を登録している人材紹介会社の社数を聞いたところ、全体で最も多いのは「2~3社」(36%)で、次いで「4~5社」(32%)と続いた。企業規模に比例して、求人数も多くなる傾向があることから、大企業では「11社以上」(28%)が「2~3社」(31%)に次いで多くなっている。紹介会社によって、登録者の多い職種(強い職種)が異なっており、募集職種や募集人数に応じて紹介会社を決めていく必要がある。
人事担当者からすれば、できるだけ窓口を多く持ちたいと依頼する紹介会社を増やしたくなるものではあるが、各社の担当者とのコミュニケーションが希薄となり、募集している人材要件が正しく伝わらなくなってしまうリスクもある。人材要件については、紹介会社側が採用担当者にヒアリングした上で独自に作成することが多いが、事前に依頼側で分かりやすい言葉で原稿化したものを用意し、各社担当者と共有することをお勧めする。そのほうが人材紹介会社側で求人原稿作成にかける時間を短縮することができるだけでなく、紹介人材のミスマッチ低減にもつながることになる。
[図表15] 求人依頼をする人材紹介会社数
【調査概要】
アンケート名称:[HR総研]キャリア採用に関する調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2019年1月21日~1月29日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:上場及び非上場企業のキャリア採用担当者
有効回答:155件
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