募集職種で多いのは断トツで「営業職」

 募集職種について聞いたところ、1位は企業規模にかかわらず断トツで「営業職」となった。最も少なかった中堅企業で59%、大企業では67%にも及ぶ。2位以下は、企業規模によって異なり、大企業では「人事・総務」(39%)、「経理・財務」(36%)、「IT関連職」(33%)が3割台で続き、「商品企画・マーケティング」「研究開発職」(ともに27%)、「経営企画」(24%)も多い。中堅企業では、「IT関連職」が41%と4割を超えるものの、「人事・総務」が24%のほかは2割以下にとどまっている。中小企業では、「経理・財務」「IT関連職」がともに26%で続き、「人事・総務」(22%)も2割を超える。

 全体を俯瞰してみると、「営業職」に次いで、「IT関連職」「人事・総務」「経理・財務」の3職種の募集が多くなっている。

[図表5] キャリア採用での募集職種TOP10(企業規模別)HRプロ

採用難易度が高いのはやはり「エンジニア」

 募集している職種について、「特に採用難易度が高いと感じている」職種を選んでもらい、その割合を比較してみた。募集職種として最も多いのは「営業職」であったが、採用難易度という点では38%で5位にとどまる。特に採用難易度が高いと感じている企業が多いのは、「IT関連職」で募集企業の83%にも達する。大企業で91%、中堅企業では93%の企業が「IT関連職」を挙げている。

 次いで多いのが、「研究開発職」(76%)で、中堅企業では募集している企業のすべてが「特に採用難易度が高い」としている。3位には、7割近い企業が挙げた「商品企画・マーケティング」がランクインしている。募集職種で上位に挙がっていた「人事・総務」は34%、「経理・財務」は27%にとどまった。「営業職」同様、比較的採用はできているということのようである。

[図表6] 特に採用難易度が高いと感じている職種HRプロ

課長クラスの採用も多い大企業、若年層の採用も多い中堅企業

 募集している人材の役職クラスを聞いてみたところ、全体的なバランスでは企業規模にかかわらず似たような傾向値を示したものの、一部に特徴的なデータが得られた。最も採用ニーズが高いのは「一般社員(中堅層)」で、企業規模による差異は少なく、8割前後の企業が選択している。次いで「一般社員(若年層)」「係長・主任クラス」と続くが、ここで企業規模による差異が生じている。「一般社員(若年層)」採用に最も熱心なのは中堅企業で、大企業が5割そこそこなのに対して、中堅企業は7割に達する。新卒採用で苦戦する中堅企業が、新卒採用で採りきれていない分を、第二新卒をはじめとする若年層の採用に求めているのではないかと推測される。

 一方、「係長・主任クラス」では、中堅・中小企業が5割以下なのに対して、大企業では7割近くにも及ぶ。この傾向は、「次長・課長クラス」ではもっと際立っており、中堅・中小企業ではともに26%にとどまるものの、大企業だけがその2倍の52%にも及ぶ。大企業では、一般社員だけでなく、マネジメント層やその予備軍の採用にも注力しているようである。

 また、大企業では「役員・執行役員」をも外部リソースに求める企業が13%と1割を超えている。組織風土の改革やまったく新しい分野への進出を図る際、しがらみの多い内部人材では限界があり、外部からの新しい風に期待するということなのだろう。中堅・中小企業では内部人材からの昇格を想定しており、「役員・執行役員」を募集している企業はわずか2~3%にとどまる。

[図表7] キャリア採用で募集の役職HRプロ

30代ニーズの高い大企業

 キャリア採用では、スキルの修得に時間を要する場合の年齢制限など、一部の例外を除いて募集要項に募集年齢を表記することは禁止されている。ただ、募集する企業側では、ある程度の想定年齢層を持っているものである。今回は、その裏側で持っている想定募集年齢層について聞いてみた。

 予想された通り20代後半から30代前半のニーズが高いものの、募集の役職と呼応するように、企業規模により若干異なる傾向が見られた。中堅企業では、「26~29歳」が74%で最も多く、次いで「30~34歳」(65%)、「40~44歳」(50%)、「35~39歳」(47%)と続く。一方の大企業では、「30~34歳」が84%で最も多く、次いで「35~39歳」が75%で続き、「26~29歳」(72%)は3番目である。30代の募集については、大企業と中堅企業の間に20~30ポイント近い開きが見られ、大企業における30代の採用ニーズが極めて高いことが分かる。

 今回、意外であったのは、募集年齢層の上限である。すべての企業規模で「40~44歳」が4割を超えるとともに、「45~49歳」を募集する企業も中小企業を除いて2割をはるかに超える。50代になっても、「50~54歳」までは中堅企業の4社に1社が募集対象とするなど、40代以上の募集も少なくないという実態である。ミドル・シニア層には、朗報と言えるかもしれない。

[図表8] キャリア採用で募集の年齢層HRプロ

ターゲット層の応募者獲得に苦戦する企業

 次に、キャリア採用における課題を選択式(複数回答可)で聞いてみた。最も多かったのは、「ターゲット層の応募者を集めたい」で54%と、唯一半数以上の企業が選択している。課題と感じているということは、現在満足できていないことの裏返しであり、多くの企業がターゲットとする層からの応募者を集められていないということである。2位以降の課題は3割を超えるものはなく、かなり分散している。2位は「応募者の数を集めたい」「技術職採用を強化したい」(ともに29%)、次いで「選考負荷を減らしたい」(27%)、「採用コストを抑えたい」(26%)と続く。
大企業では、「選考負荷を減らしたい」が35%で、他の企業規模よりも多くなっているほか、「採用数の根拠を明確にしたい」(26%)、「採用方法を見直したい」「採用スタッフ体制を強化したい」(ともに24%)なども比較的多くの企業が課題感を持っている。

[図表9] キャリア採用における課題HRプロ

  具体的な課題も見ておこう。

・職務経歴書の内容(実績)と実際の業務スキルとのギャップ(1001名以上、サービス)
・グローバルな人選と多国間との年棒の均一化(1001名以上、メーカー)
・エージェントと契約しても人が紹介されない。契約書確認の作業だけで終わるケースが多い(1001名以上、メーカー)
・現場との調整、採用後の定着(1001名以上、情報・通信)
・内定承諾率の低さ、長期的なキャリアプランを応募者に対して示せない(1001名以上、商社・流通)
・採用スタッフのマンパワー不足で、戦術を実行できない(301~1000名、サービス)
・技術職を採用したいが、持っているスキルを計りにくい(301~1000名、メーカー)
・行き当たりばったりの採用のため、選考者の質が低下している(301~1000名、不動産)
・当社の要件水準と候補者との報酬水準の乖離(300名以下、サービス)
・求人媒体の融通のきかなさを何とかしたい(300名以下、サービス)
・選考のスピードを上げられない。それぞれが少人数の組織で多忙を極めているため、面接日の調整そのものに苦労している(300名以下、メーカー)
・経営陣の理解と協力(300名以下、メーカー)
・キャリア採用計画が明確化されていない。採用計画が明確にあるわけでは無く、スポットで欠員補充の要請が出たら行うという形で行っているため、予算をたてにくい(300名以下、運輸)
・ターゲット層がレッドオーシャン化している(300名以下、コンサル)

新卒と違ってあまり重視されない「卒業大学」

 募集企業がキャリア採用で「重視している項目」は何であろうか。複数選択で回答してもらったところ、意外にも半数以上の票を獲得した項目は「経験職種」(76%)と「人柄」(63%)の2項目のみで、それ以外の項目は多くても4割強となっている。3位以下は、「転職理由」(43%)、「受け答えの仕方」(40%)、「仕事での成果」「志望動機」(ともに39%)と続く。

 転職サイトを通じての自主的な応募と違い、人材紹介会社経由での応募の場合にはそれほど強い「志望動機」があるわけではなく、重視する項目としてはポイントが高くならないのかもしれないが、内定後の承諾率を考えた場合には、「志望動機」が自社への志望度を測るバロメーターになるわけで、ここがあやふやな場合には内定辞退につながる確率が高くなる。人材紹介会社経由であったとしても、もう少し「志望動機」を重視してもよいのではないだろうか。

 一方、「あまり重視しない項目」についても聞いてみた。トップは「卒業大学等」(53%)で、唯一半数以上の企業が挙げた項目である。面白いのは、企業規模別に見たときに、企業規模が大きくなるほど「卒業大学等」を「あまり重視しない」としていることだ。中小企業では45%、中堅企業では58%なのに対して、大企業では64%といった具合だ。新卒採用の際には、多くの大企業が「学歴フィルター」あるいは「ターゲット校」の名目の下、特定の大学の学生に対してのみ、リクルーターの派遣や大学別OB/OG懇談会の実施など、他の大学とは一線を引いた優遇措置をしているにもかかわらず、である。キャリア採用においては一転して「重視しない」方針に転換しているのである。

 ただ、2位の「勤務した会社名」では逆の傾向が見られる。中小企業の53%、中堅企業の39%が「あまり重視しない」としているのに対して、大企業で「あまり重視しない」企業は27%にとどまる。逆に言えば、大企業は「勤務した会社名」を気にするということである。スピード感やチャレンジ精神といったベンチャースピリットを持った人材を獲得したいがために、ベンチャー企業で勤務した人を採りたいと考えているのであればよいのだが、前社もそれなりの大企業で勤務した人だけを求めるとしているのならば、それは考え直した方がよいだろう。

[図表10] キャリア採用に置いて「重視する項目」と「あまり重視しない項目」
HRプロ