(文:西野 智紀)
今年1月14日、ツイッターである話題がトレンドを席巻した。「#古典は本当に必要なのか」というハッシュタグに連なる論争である。震源は明星大学人文学部日本文学科が主催した同名シンポジウムだ。
公開討論会の再現だけでなく反響も収録
この催しの趣旨は以下のとおりだ。2015年の文系学部廃止報道以降、日本の古典文学研究・教育は縮小の一途をたどっている。この危機に対して、古典(本書では主に古文・漢文を指す)の価値を訴える書物や討論は少なからず世に出てきたが、これらは守る側だけの論理で完結してしまっていたように思われる。つまり、否定論・不要論と正面から向き合ってこなかったのではないか。
そこで、肯定論者だけでなく否定論者もまじえて真剣に意見を交わすことによって初めて見えてくるものがあるはず。本書は、インターネットでも中継されたこの公開討論会の紙上再現に、終了後の会場アンケート結果、SNSでの反響、後日談としての総括を加えた白熱の全記録である。
本書の編者である、シンポジウムのコーディネーター・勝又基氏(明星大学日本文化学科教授)の前口上から、身の引き締まる思いのする部分を少し引用してみる。
“今日の議論は、大げさではなく、古典がある側面において、終わるきっかけを作ってしまうかもしれません。またあるいは、日本の古典が新たな一歩を踏み出す日になるかもしれません。すべてはこれから3時間半の議論にかかっています。皆さんの積極的なご参加をお願いいたします。”
まずは問題提起の役割も果たす否定派パネリスト2人の主張から書いていこう。なお、ここからは「高校の必修科目に古典は本当に必要か」という題目で進んでいくことに留意されたい。