宮内庁庁舎(Wikipediaより)

 天皇が埋葬され国の貴重な文化財となっている天皇陵。「聖域」であるがために、調査発掘が許されることなく現在に至っている。天皇陵を聖域たらしめている本当の理由は一体何なのか。歴史学者の外池昇氏が天皇陵の謎を解明する。(JBpress)

(※)本稿は『天皇陵「聖域」の歴史学』(外池昇著、講談社学術文庫)より一部抜粋・再編集したものです。

問題の核心「天皇陵」

 陵とは天皇・太上天皇(すでに退位した天皇)・太皇太后(先々代の天皇の皇后)・皇太后(先代の天皇の皇后)・皇后・北朝天皇の遺骸が葬られている場所、墓とはこれ以外の皇族の遺骸が葬られている場所をいい、陵墓とはその全体をいう。

 つまり、天皇陵とは陵墓のなかのひとつのカテゴリーである。とはいいながら、天皇陵をめぐる問題は、陵墓全体をめぐる問題の核心であり象徴である。