エクソンモービルはコノコフィリップスの約2倍の原油・ガスを生産していますが、同時に約2倍の新規埋蔵量の獲得が必要ということになります。

 「イージーオイル」の消滅、産油国の資源ナショナリズムの台頭、中国をはじめとした国営石油会社との権益獲得競争の熾烈化などによって、近年オイルメジャーにとって埋蔵量確保がますます困難になってきています。

 このような厳しい環境の中で、今までオイルメジャーが長年戦略の柱としてきた資産拡大は限界に近付いているのではないでしょうか。資産を拡大すればするほど、埋蔵量獲得のハードルが高くなるからです。

資産の縮小

米、メキシコ湾の海底油田掘削凍結措置を条件付きで解除

米ルイジアナ州沖に建設中の石油掘削施設〔AFPBB News

 このような背景の中、オイルメジャー各社で事業戦略の違いが見えてきました。

 先ほど紹介したコノコフィリップスですが、特に2004年から2008年の間にロシア石油会社Lukoilの株式20%買収(24億ドル=1920億円)や、北米天然ガス会社 Burlington Resources 買収(350億ドル=2兆8000億円)などの大型M&Aによって拡大路線を積極的に推進してきました。

 しかし、世界同時不況によるエネルギー価格低迷の煽りを受け累積負債が膨らんだことから、2009年に100億ドル(8000億円)の資産売却を発表し、拡大路線と決別しました。

 その結果、コノコフィリップスの2010年の年間石油換算生産量は前年に比べ約10%減少しましたが、同時に、新規資産の買収ではなく手持ち資産の開発を進めたことにより138%のリザーブ・リプレイスメント・レシオを達成しました。

エクソンモービルの賭け

 一方対照的に、エクソンモービルは2009年に北米シェールガス大手XTO社を410億ドル(3兆2800億円)で買収し、2010年の年間石油換算生産量は前年比で13%増加しました。

 このエクソンモービルのXTO社買収は、シェールガス台頭によって米国天然ガス価格が持続的に低迷することが予想される中でなぜ?との疑問が上がりましたが、北米天然ガス事業の事業性や将来性よりも、埋蔵量の確保が目的であったとの見方があります。

 この見方を裏付けるのがエクソンモービルのリザーブ・リプレイスメント・レシオです。2009年のデータですが、エクソンモービルの原油換算ベースのリザーブ・リプレイスメント・レシオは134%を確保したものの、その中身を見てみると、原油・コンデンセートなど液体燃料のリザーブ・リプレイスメント・レシオは92%と100%を割り込んでしまいました。

 XTO買収により一気に天然ガスのリザーブ・リプレイスメント・レシオが193%と上昇したことによって、何とか液体燃料と天然ガスを加えた原油換算ベースのレシオを押し上げたのが実情です。

市場の評価

2010年株価の推移

 では、この対照的な戦略を取ったコノコフィリップスとエクソンモービルですが、株式市場は両社をどのように評価したでしょうか?

 2010年のエクソンモービルとコノコフィリップスの年間の株価推移を表したグラフを見てみますと、エクソンモービルの株価は年初から年末まで約6%しか上昇していない一方で、コノコフィリップスの株価は約30%も上昇しました。