【第1部】中島隆信氏講演:「障がい者の経済学」からみた日本の働き方

 携帯電話の普及をはじめ、昔では考えられない世界に私たちは生きています。新しい技術が生まれれば、それを活用した働き方が生まれ、障がい者雇用もまったく別の形に変わる可能性があります。

 法定雇用率を達成するため無理やり従来型の障がい者雇用を行って、意味のない仕事をつくりだすのではなく、彼らを一人の企業人、戦力として採用するのが望ましい雇用の形だと思います。

 現状の障がい者雇用の問題点は、障がい者ができる仕事は清掃や軽作業等と固定観念を持ち、それに彼らをはめ込むことです。制度的な面でも、親会社の特例子会社が障がい者を雇用し、グループ全体の雇用率にカウントする「グループ適用」を用いることで、大企業は法定雇用率を達成しています。

 しかしこのやり方だと、子会社は親会社の特例子会社にフリーライドして、自ら障がい者を雇おうというインセンティブが生まれません。また、親会社の間接業務の仕事量はそれほど増えないため、今後障がい者雇用を増やしていくことは難しくなります。

 また、こうした特例子会社は首都圏に集中しているため、特別支援学校の就職率も東京が突出しています。親会社から受注する単純事務作業などは地方になく、あったとしても案件が少ないため障がい者を雇うことはできないからです。

 ある東京の特別支援学校は障がい者が仕事につくための就業技術科があり、就職率100%を目指していますが、単純作業ができそうな生徒を集め、学校内で事務など単純な仕事を3年間やらせて企業に見せる。そこで就職につなげるのです。生徒たちのゴールが決まっているとも言えるでしょう。しかし、そのような本業とはほぼ無関係の作業に長期間従事して、仕事のやりがいを持続することができますか? キャリアを形成し、ステップアップしていくならともかく、最初からできる仕事が決められているのです。特別支援学校の優秀な生徒たちでさえも、このような仕事・状態が終点なのです。

 優れた経営者であればこのままじゃいけない、彼らが現場で戦力になるような働き方、仕事のつくり方をしなければもたないと考えるはずです。つまり本業で障がい者を活用する。それでは本業で障がい者の方たちの仕事を増やすにはどうしたらいいでしょうか。

障がい者雇用ありきではなく、戦力として採用する

 まずグループ適用をやめ、本業で仕事を増やすことです。そのための手段として考えられるのが、グループ内の会社に未達成分相当の仕事を特例子会社に発注させることです。それが出来なければ人件費相当額を特例子会社に支払わせる。そうすれば、子会社はいかにして現場で仕事を作っていけるか考えるはずです。

 次に、テレワークによって場所に縛られない雇用機会を増やし、地方での雇用機会を創出します。現在はネットワークが充実しているので、遠方にも発注が可能です。ですが労務管理の問題があります。例えば精神障害の方は毎日決まった時間に勤務することがなかなか難しいですし、深夜勤務希望の方もいます。そうなると発注側の管理が大変になってしまいます。

 これらの問題を解消するには「みなし雇用」制度の導入が必要です。つまり「場所」「時間」「人数」に縛られない雇用を増やすのです。例えば25万円分の仕事であれば、それをサテライト代わりとなるAという障がい者関係の施設に発注し、障がい者各人の仕事のやり方は施設に任せる。深夜勤務が希望であれば深夜に、というように。しかしそれには企業とA施設を結ぶ仲介役が必要です。両者のマッチングを担ってくれるような企業はあまりないので、このような企業が増えればみなし雇用は爆発的に増えるのではないかとみています。

 これからは、障がい者の雇用ありきというのではなく、戦力として彼らが必要だから雇うという企業が増えるのが望ましいです。無理に不要な仕事を増やすのではなく、障がい者の能力を活かし、やりがいを感じる仕事を与えつつ、徐々に雇用率を上げていくべきです。多様な働き方の実現こそがリスクを減らし、雇用機会を増やすのではないでしょうか。