つまり、シニア層にどれだけ寄り添ってみても「ちゃんと働けと言いたいのだろう」などと見透かされてしまうのです。上記のような対応は、かえってシニア層のやる気を失わせ、彼らを拗ねさせてしまうのです。

シニアがまた輝ける人材に

 であるならば、変に寄り添うスタンスのシニア向け研修は止めましょう。9割以上は「自分を大切に扱ってくれない」と拗ねて、駄々っ子と同じ心情になっています。この状態を解消するためには、まずは現在の職場で周りからどう扱って欲しいのか、彼らの本音を引き出すことから始めます。過去を振り返るのではなく、今と未来に目を向けさせるのです。周りから「やっぱりベテランの〇〇さんは凄い!」と思ってもらえるようにするには、自分自身が周りに対し、どんな意識で行動をすればいいのかを気づかせるのです。周りに対するスタンスと言動や行動が変われば、職場での扱いが変わります。そうなれば尊厳も取り戻せます。その上で学び直しの研修を行うと、今度は新しいスキルやノウハウをみるみる吸収してくれ、再び輝ける人材に変わっていくようになります。

「どう扱ってもらいたいのか」を気づかせる

 シニア層に今と昔のギャップを意識させることは止めましょう。「実力ではなく年齢で外された」などの被害者意識が出てくるからです。キーは今にフォーカスさせ、今の職場で大事に扱ってもらえるようになるには、どうすればいいかに気づかせること。そこがスタートですが、理屈で説明すると拗ねてしまいます。誰かが説明するのではなく、自ら気づかせることが大切です。そのためには心理学的なアプローチが有効です。

(1)「解決できないこと」と「本人が問題視していること」を分ける

 はじめにシニア層がイライラ、モヤモヤしていることの視界をハッキリさせます。まずは書き出させるのがよいでしょう。そこでイライラ、モヤモヤの原因を「本人達で解決できないこと」と「問題視していること」に区分けするのです。

「景気低迷から経営が悪化し、50代シニア社員が必要とされないムードが会社にある」などという、シニア層が自分達で解決できないことを彼らとの間で議論してもモチベーションダウンにしかなりません。解決できないことはいったん受け止めますが、そうした議論にならないように、「本人達が問題視していること」に気づかせるのです。

「なぜそれをあなた(達)は問題視するの?」「その結果、あなた(達)はどうなるの?」という具合にどんどん掘り下げていきましょう。すると「尊敬されたい。大事に扱って欲しい」などという本音が出てきます。