ここまできたら次に、「どうすれば、周りはあなたをそう見てくれるの?」というように、本人が現場で現実的にできるアプローチを導くことに集中させます。この段階に来ると、本人も「普段の自分の態度だと周りも冷たくなるな」などという具合に、原因は会社や周りではなく自分にあることに気づきはじめます。これは傷口に塩を塗る手法ではなく、小さくていいので、一歩前に踏み出してもらうためのアプローチです。「出勤したら、『おはようございます』と自ら元気に声かけよう」でも結構です。小さな一歩でも、周り対する行動や言葉が変われば、自ずと職場での扱いも変わってきます。

 こうなればしめたものです。次は現時点から定年までの前向きな未来時間のイメージを作ってもらい、「今から定年までにこれをやりたい」という未来志向の行動計画を立ててもらいます。目指す姿を明確にし、「どうすればそこに近づけるか」に絞ってプランニングするため、現実的であり、かつワクワクするものなのでシニア層の目の色も変わってくるはずです。

 こうした研修を受けたシニアは、職場に戻ってからも周囲と協調性のある具体的な職務行動計画を描けるようになるのです。

周囲も「シニアとの接し方」を学ぶべき

(2)シニア層が多い職場のメンバーが余計な気を使わず、接して動かすノウハウを身に付けさせる

 シニア社員がやる気を出すために必要なのは「未来時間イメージ」と「共同体意識」です。ただし、シニア層はプライドが高く、ガラスのハートの持ち主です。職場に戻った時に、周囲の扱いが今まで通りだと、一瞬で心が打ち砕かれてしまいます。

 そうなってしまってはお互いに悲劇です。ここは受け入れる側で態勢を整えましょう。シニア層ご本人の行動計画をもとに、職場の一人ひとりが、どう接してあげるとシニア層の助けになるかを考えさせておくことは基本です。

 シニア層と接する時のコツも研修で身につけさせておくとなおよいでしょう。

 日本人は、年上の部下や同僚を持つのが苦手です。人生の先輩でもあるシニア層が部下や同僚になると、どう接していいか困るものです。シニア層を褒める、叱る、コーチングするなど、年下の上司や同僚はできないでしょう。シニア層も年下にこのアプローチをされると傷つきます。

 年上の部下や同僚と上手くやっていくコツは、「感謝で動かす」ことです。感謝をすればシニア層は傷つかず、気持ちよく動いてくれるようになります。感謝なら上から目線のように感じられないので周りも気兼ねなく接することができるようになります。年功序列の制度は賞味期限が切れました。職場の大先輩が横の席に座ったり、部下になったりするようなことが当たり前になります。ご安心ください。当初は「やりにくいな」と感じることもあるかも知れませんが、この2つのアプローチを行えば、先輩たちも、こちらが特別な気を使わなくても元気に動いてくれるようになります。ぜひ試してみてください。