福島第一原発では連日決死の復旧作業が続いている。仕事とはいえ命を賭して闘う自衛隊、消防、警察、東電などの関係者には頭の下がる思いだ。彼らは我々日本人の誇りである。
一方、被災された方々の多くは秩序と冷静さを保ちながら、今も辛い避難生活に黙々と耐えている。こうした日本人の結束の強さや礼儀正しさを中国のメディアやネット論調は、従来日本に批判的だった知識人も含め、概ね絶賛しているそうだ。
この件で先週、北京から国際電話があった。「今、中国では日本を賞賛する声が高まっているが、これで日中関係は好転すると思うか?」米国某大手メディアの旧友からのインタビュー取材だった。
筆者が「基本的に変わらないだろう」と答えると、友人は最後にこう付け加えた。
「変わらないと言えば、中国の消費者も全然変わっていないよ。今、中国各地で店頭から食塩がなくなっている。変なデマが流れて、誰かが買い占めているらしい」
興味深い話である。日本でも水道水の放射線レベルが高まり、ミネラルウォーターの買いだめ騒ぎが起きるかもしれない。というわけで今回は、お約束したウイグルの話を来週に回し、塩買い占めに見られる中国人の心理について考えてみたい。
塩の買い占め
各種報道によれば、今回の塩騒動の顛末は概ね次の通りだ。
●3月16日頃から、広東省、浙江省など沿岸部を中心に、突然食塩を買い求める人々がスーパーや商店に殺到し、売り場から塩が消えた。
●日本の原発事故で海水が放射線に汚染された、放射線予防にはヨウ素が有効だ、ヨウ素を含む食塩は放射線の害を防ぐ、これから手に入る食塩は危険だ、といった根拠のない一連のデマがネットなどで流れたためである。
●思惑や投機により需要が急増したため、通常500グラム入りの1袋1.3~1.5元だった食塩の価格が、一時は1袋10元以上にも跳ね上がった。
●3月17日、国家発展改革委員会は「デマを広め価格を吊り上げる行為は徹底的に取り締まり、厳罰に処す」との緊急通達を関係部門に流した。