ところが、その気配は未だ一向に見られない。先月28日の放送から一夜明けた翌29日、張本氏は東京ドームで行われた「サントリードリームマッチ 2019」に参加。ダルビッシュからツイッターで怒りをぶちまけられた直後というタイミングもあって試合終了後に大勢の記者に囲まれたが、結局はここで前日の問題発言に関して何も発さないまま球場を後にしている。「あの威勢のよさは一体どこへ行ったのか」と取り囲んだメディア取材陣を心底がっかりさせた。

イチロー 満塁本塁打で張本氏に並ぶ

2009年4月、マリナーズのイチローが、日米通算安打数を3085本として張本勲氏の持つ日本プロ野球通算最多安打記録に並んだ。写真は試合前にイチローと言葉を交わす張本勲氏(右)。(2009年4月15日撮影)(c)AFP/Getty Images/Otto Greule Jr〔AFPBB News

 ちなみに今までも張本氏は同番組でかなり的外れの指摘を繰り返し、その度にネット上でぶっ叩かれている。野球だけではなく、ロクに知らないはずなのに他のジャンルのスポーツに関するコメントまで番組内では求められ、昭和世代特有の根性論をバックボーンにしながら明らかに乱暴な意見を押し通してしまう。それで毎週のようにネット上は〝炎上〟してしまうのだ。正直に言えば、かなりメチャクチャな「御意見」を言うことが分かっている張本氏を番組に起用し続けているTBSの姿勢も問題視されなければなるまい。

カズへの「引退勧告」を釈明した過去も

 しかも張本氏は、これまで自分の発言、もとい失言を撤回した例がほとんどない。ただし、数少ない例外もあった。2015年4月12日放送の同番組内でJ2の横浜FCでプレーする「カズ」ことFWの三浦和良選手がジュビロ磐田戦でゴールを決め当時、自身の持っていたJリーグ最年長得点記録を更新したというニュースを受け「J2は野球でいうと二軍だから話題性がない。若い選手に席を譲ってやらないと。しがみつく必要はないでしょ、これほどの選手なんだから。指導者に」「カズファンには悪いけども、もうお辞めなさい」などと引退勧告を口にした一件だ。

 当然のように日本中から猛烈な批判が向けられる中、当のカズから「この発言は光栄。激励と思って頑張る」と〝大人の対応〟で逆に感謝されてしまったこともあり、張本氏はいよいよ無視出来なくなってしまう。そして翌週の放送で自身のカズに対する発言を再び取り上げ「(進退は)本人が決めることだから。やりますと言うのなら私は不満だけど、最後まで応援します」「まだ会ったことないけど、どこかで会ったら食事をごちそうするから」などと苦しい弁明を連発させながら、赤面ものの〝手のひら返し〟で乗り切らざるを得なくなったのである。