ゴーヤーの苦味生合成経路、「金平糖解析」で解明へ

類まれなる“苦い作物”をめぐる歴史と科学(後篇)

2019.07.19(Fri)漆原 次郎

 一例を示そう。ゴーヤーのRNA解析によって得た各遺伝子の発現データと、各器官における成分試料のデータを記したエクセルの表データを用意する。そしてこの表データを「金平糖解析」にかけると、すでに得られている遺伝子発現パターンなどを参考にしながら、コンピュータが類似性の高い遺伝子を順番に示していくのだ。上位に示された遺伝子は、探している酵素の遺伝子である可能性が高い。これにより、特定・単離すべき遺伝子の目星がつく。

「金平糖解析」による遺伝子選抜の結果イメージ。2万7127の遺伝子から19遺伝子が選抜された。「金平糖」は、各遺伝子の相関ネットワークが金平糖のように形づくられることから。大阪府立大学の尾形善之氏との共同研究でトポロジーという幾何学の分野を応用し、解析自動化を実現させた。ソフトウェア名は「Confeito GUI plus」。データ解析は「HiSeq1000」などの装置が行う。ゴーヤーの事例以外に、「味覚と成分データをひもづけられるため食品メーカーに興味を持っていただくなどしています」と鈴木氏。 (画像・写真提供:鈴木秀幸氏)
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 実際、研究グループは「金平糖解析」を実行し、2万7127の遺伝子から一挙に19の候補遺伝子まで絞り込むことができた。さらに、そのうちの「シトクロムP450」という酵素群の各遺伝子が、いずれもククルビタシン類の生合成経路に関与していることが分かった。これで、ククルビタシン類にたどりつくまでのステップ全体のうち「4分の3ぐらいはすでに明らかにできたと思います」と久城氏は言う。「残りの部分の解明とともに、輸送のしくみや、熟して甘くなるしくみなどの解明などが今後の課題といえます」。

苦味の制御や、保健・医療分野への応用も

「金平糖解析」などで遺伝情報を網羅的に解析していけば、“ゴーヤーのゴーヤーらしさ”がどうつくられるかが見えてくる。それにより、苦味を抑えたり増やしたりといったゴーヤーの風味の制御も可能となろう。また、ククルビタシン類には抗糖尿病などの健康にプラスとなる作用があることも研究で解明されている。この成分を微生物につくらせるなどして、健康食品や医療に応用するといったことも期待できる。

「遺伝子の機能を見つけることを久城先生をはじめ大学の研究者がしてくれるので、われわれ研究機関は、実用化に向けての橋渡しとなるような基盤研究で期待に応えていきたい」(鈴木氏)

 長い視点で見ると、ゴーヤーは約300年にわたり地域野菜でありつづけ、その後30年ほどで全国化した。いまそこに、科学研究の力が注がれている。こうして、日本のゴーヤーは21世紀の前半、もうひとつ大きな変化を遂げようとしているのだ。

* 記事初出時のジャガイモについての記述に、より説明の必要な箇所がありました。記事では修正済みです。(2019年7月21日)

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