この点について、安倍首相は先の国会答弁で、「それ以上の出口戦略云々については、日本銀行に任せたい」と明言を避けたが、安倍首相が日銀の金融緩和政策を重視していないのは明らかだ。

 だが、そもそも日銀自身の金融政策目標に「雇用」は含まれていない。日銀に金融緩和政策を実施させることの「本当の目的は完全雇用」とは、安倍首相自身もこれまで一度も発言したことがなく、いかにも後付けのように聞こえる。

 事実、日本銀行法の第2条では、「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする」とされており、“雇用の雇の字”も出てこない。

 さらに問題なのは、第2次安倍政権と日銀の間で2013年1月22日に交わされた「政府・日本銀行の共同声明」の存在だ。

 同声明には、「日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする」ことが明記され、この目標達成にあたって、「政府及び日本銀行の政策連携を強化し、一体となって取り組む」ことが宣言されており、政府と日銀の政策連携の合意文書と位置付けられている。

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 もし、2%の物価安定目標を放棄するのであれば、同文書を改訂するか、破棄する必要がある。もちろん、2%の物価安定目標を達成する前に、金融緩和政策の出口戦略を行うのであれば、同文書の改訂か、破棄が必要というのは、学者や学識経験者、金融実務家の間で言われていることでもある。

 つまり、この文書がある以上、いくら安倍首相が「金融政策は目的をすでに達成している」と言っても、日銀は簡単に金融緩和政策の出口戦略に踏み出すわけにはいかないのだ。同文書の改訂か破棄をしないままで、日銀が出口戦略に踏み出せば、それは政府との政策連携の合意を日銀が反故にしたことになるからだ。

簡単に出口戦略に踏み出すわけにいかない理由

 だが、安倍首相が日銀の金融緩和政策に重きを置かなくなっているのは、実は今に始まったことではない。

 2018年9月14日に行われた自民党総裁選の討論会で、安倍首相は「異次元ではあるがやるべきことをやった。でも、ずっとやってよいとはまったく思っていない」と、日銀の金融緩和政策(いわゆる異次元緩和)について述べ、さらに、「よい形で経済が成長してきている中で、私の任期(2021年9月)のうちにやり遂げたい」と発言している。その後、麻生太郎財務相も「こだわりすぎるとおかしくなる」と発言しており、要するにすでに、政府は日銀の金融緩和政策に見切りを付けていたのだ。これについては、新潮社フォーサイト2018年10月18日の拙稿「カウントダウンが始まった『リフレ政策』終わりの始まり」を参考にしていただきたい。

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