1970年代から日本製品不買運動に関与してきた韓国政府
韓国の情報機関「国家情報院」が2007年に発刊した「過去との対話、未来の省察Ⅴ」という資料がある。ここには過去に韓国の情報機関が関与し企画した工作が紹介されているのだが、注目したいのは、朴正煕政権時代、国家情報院の前身である中央情報部がマスコミを利用し起こした「反日工作」についてである。
1973年に東京で「金大中拉致事件」が起きた。韓国の中央情報部が野党の指導者であった金大中を拉致した事件である。自国において外国の、つまり韓国の情報機関が起こした犯罪行為に対し、当時の日本政府は韓国政府に対し強く抗議し、日本社会にも反韓感情が広まった。結果として韓国政府が国内外において窮地に立たされることになった事件だ。
資料には、これに対処するために韓国マスコミを利用し韓国内で日本糾弾集会や日本製品不買運動を集中報道させるという、中央情報部の計画が記載されている。韓国国民が反日集会や日本製品不買運動といった行動を起こし、日本に激しく反発する姿をマスコミを通じて国内外に宣伝することによって、一方的に追い込まれた「守勢」から、「攻勢」へ転じようという目論みである(自衛隊哨戒機に対するレーダー照射により韓国が窮地に追い込まれたときに、「低空脅威飛行」というカードで国内の反日感情を盛り上げ「反撃」に出たのとよく似ている)。
金大中事件は、40年以上も前の軍事政権時代に起きた出来事だ。その後韓国は民主化を成し遂げ30年以上が経ったと自負する。だが今の韓国の雰囲気は当時とは違うということができるだろうか?
不買運動団体の前代表は現職の青瓦台秘書官、現代表も親文勢力
今回、日本大使館前で記者たちを集め日本のブランドの名前が書かれた箱を踏みつけるというパフォーマンスをしてみせたのは韓国中小商人自営業者総連合会という長い名前のついた団体だ。この団体の性向が問題だ。
この団体で昨年まで前会長を務めていた印兌淵(イン・テヨン)は現在、青瓦台の秘書官として政権の核心部にいる人物だ。彼は過去、韓米FTA反対、国家保安法廃止を主張し、2012年2月には統合進歩党(内乱扇動容疑で強制解散された親北極左政党)の党大会に参加し支援演説、2012年大統領選挙では文在寅の選挙対策委員会の市民キャンプ共同代表を務めた「運動家」としての経歴を持つ。
そして今回、不買運動パフォーマンスを主導している共同会長 キム・ソンミンは昨年11月、ソウル市内のど真ん中で「大統領様 ありがとうございます」というプラカードをもって文在寅を称賛する集会を開いた人物でもある。
つまり日本製品不買運動という「パフォーマンス」を繰り広げているのは、日韓両国のマスコミによると「一般人」のように紹介されているが、実際には筋金入りの親文在寅勢力であり、政権とも間違いなく繋がっている団体なのだ。ここまでくれば「官製デモ」だと言っても大きく外れてはいないだろう。
結果から見れば、反日集会や日本製品不買運動により両国関係をより深い「泥沼」状態であるかのように見せることに成功し、日本の世論に「疲労感」を与える程度の効果はあったと見るべきだろう。文在寅政権がそれを意図的に行っていたにせよ、そうでないにせよ、軍事政権が過去に行ってきた手法をそのまま踏襲しているのだ。
残念なのは日本で、このような背景が全く報道されていないということだ。もし、このような背景が、詳細に報道されていたのなら、日本国内の反応も違うものになっていただろう。韓国の怒りと不買運動をみて、韓国人の怒りに対する憂慮と両国関係に対する懸念を感じる人よりは、韓国政府の「焦り」を感じ取る人の方が多かったのではないだろうか?