贈答を巡る変化は、人間関係の移り変わりを表している。

(三矢 正浩:博報堂生活総合研究所・上席研究員)

 私の在籍している博報堂生活総合研究所は、1981年の設立から現在に至るまで、「生活者発想」に基づいて生活者の行動や意識、価値観とその変化をみつめ、さまざまな研究活動を行っています。

 前回に引き続き、世の中で生じている事象に対して、研究所に蓄積された研究成果やそれらに基づく独自の視点により考察を加えてまいります。読者の皆様にとって、発想や視野を広げるひとつのきっかけ・刺激となれば幸いです。

20年間で増えた贈答、減った贈答は?

 6月というと、皆さんはどんなイメージをお持ちでしょうか。梅雨入りや土日以外の休日がない月、国の定める環境月間・・・と、いろいろな特徴のある月ですが、結婚シーズン(ジューンブライド)、父の日、夏のお中元の準備と、実は贈答に関連したイベントが豊富な時期でもあります。

 以前のコラムでもご紹介した通り、夏のお中元や年末のお歳暮を欠かさず贈っている人はだいぶ少なくなってしまいました。背景には家計の余裕がなくなってきたことや、伝統的な儀礼・慣習を重視する意識が薄くなっていることなどが影響していると考えられます。

 だとすると、暮らしのさまざまな節目やイベントに関わるその他の贈答についても、同様に贈る人が少なくなっているのではないか? と、そんな疑問も湧いてきます。一方で、買い物環境としては、ネット通販などを利用して贈答も手軽にできるようになっているなど、追い風の要素もありそうです。実際のところ、「贈答離れ」は起こっているのでしょうか?

 というわけで、博報堂生活総研の長期時系列調査「生活定点」(首都圏・阪神圏の20~69歳男女 約3000名に聴取、調査概要は記事末尾に記載)から、贈答に関連するデータを紹介したいと思います。

 父の日や結婚祝い、就職祝いなど15項目の贈答機会について、直近1年間で贈答した経験があるかどうかを回答してもらったところ、20年間で増加したのは5項目、減少したのが10項目でした。減少している項目数が上回っているところをみると、感覚的には「贈答離れ」の傾向にあるのかな・・・とも思えますが、内訳をそれぞれ見ていきましょう。