19歳で日本を飛び出し、ドイツへと活躍の場を移した酒井高徳。28歳となったいま、その胸の中には、さまざまなことを経験したことによる「ある思い」が去来していた。
 それは「W(ダブル)」――。
 本人にとって初めての著書のタイトルにもなり、反響を呼んだその思いについて、紹介する。
(JBpress)

(※)本稿は『W~人とはちがう、それでいい』(酒井高徳著、ワニブックス)の一部を抜粋・再編集したものです。

人とは違うというコンプレックス

 今回、本を出すという機会に恵まれて思い浮かんだことは、自分の半生を書くということではなくて、自分が苦しみ、喜び、失敗し、成功を経験したことから感じた、思いを伝える、ということだった。

 それは、もしかしたら自分と同じような境遇の人たちに、ちょっとかもしれないけれど、勇気を与えることができるかもしれない――おこがましいかもしれないけれど、そう思った。

 幼少期、(日本人とドイツ人のハーフとして)人とは違うというコンプレックスを抱えて生きていた。

 それが、サッカーをとおして少しずつ自分を認めることができるようになり、さらには、人にも認めてもらえるようになった。

 今より上に行きたい、そんなモチベーションが僕をどんどん前進させてくれ、海外でプレーし、キャプテンも経験した。

 確実に、僕は変わった。コンプレックスを克復できた。

 なぜか。

 もちろんたくさんの人の助けがあったし、運やタイミングもあったかもしれない。それには感謝しかないけれど、自分がどうしてきたかということを振り返ると、確かだと思えるものがひとつあると感じている。

 ドイツに来てからの僕は、サッカーにおいて苦しい日々を過ごすことも少なくなかった。試合に出られないこと、腐ってしまったこと、降格争い、代表への葛藤……。そんなとき、支えてくれたのは日本人であることだった。

 規律正しく、人としての思いやりをもつこと。
 挫折をしても自分を律するプロフェッショナルであること。
 他人を理解し、チームのことを考えること。
 さらには、目立たなくても歯車となり、組織を支えること……。

 ドイツでも日本人の素晴らしいメンタリティを忘れることなくまっとうし、表現できたことは、誇らしく、また酒井高徳という人間を大きく成長させてくれた。