ECサイトの急激な成長とキャッシュレス化の進展によって、今や世界の小売業の最先端を行くともいわれる中国。そのなかでリアル店舗はどのように生き残りを図っているのか──?
2019年1月に中国で『实体店价值 要这样体現!(リアル店舗の価値はこうつくれ!)』(南海出版公司)という中国語の書籍が発売された。栃木県でカメラ販売トップシェアを誇るカメラ販売店チェーン「サトーカメラ」の佐藤勝人副社長と佐藤勇士IT事業部部長・想道美留貿易(上海)総経理による共著書である。
日本では中国の小売業の先端的なデジタル戦略が伝えられている。しかし、中国で店舗運営のコンサルティングを行ってきた著者の1人、佐藤勇士氏は、中国では今リアル店舗の価値が見直されつつあるという。同氏に中国小売業の最前線の状況を聞いた。
店に置いてあるだけではもう売れない
──『リアル店舗の価値はこうつくれ!』は誰に向けて書いた本ですか。
佐藤勇士氏(以下、敬称略) 主に中国のカメラ販売店のオーナー、店長向けです。
──出版の経緯を教えてください。
佐藤 サトーカメラは2014年から中国でキヤノンさんの販売店、ショールーム向けに店舗運営のコンサルティングを行い、店舗によっては売上が2倍になるなど大きな成果を出すことができました。その過程で、キヤノンさんからマニュアルのようなものはありませんかという話をいただき、書籍を作ることになりました。サトーカメラが日本で出している本の内容をそのまま中国語にするという方法もあったのですが、せっかく中国で発行しますので、完全に中国の販売店向けに書き下ろしました。
──中国でのカメラ販売は現在どういう状況ですか。
佐藤 5年ほど前までは、店に商品を置いておけば勝手に売れるという状況でした。販売店がすることと言えば、基本的にメーカーと仲良くして新製品を卸してもらうことだけ。あとは、メーカーが商品の棚を作ってポスターからPOPまで用意してくれるので、何もする必要がなかったんです。
でも、中国のカメラ市場はすでに頭打ちの状態です。中流以上の中国人の間にカメラがだいたい行きわたってしまったので、もう店にカメラが置いてあるだけでは売れません。おまけにお客はネット通販に流れ、価格競争も激化しています。販売店は2~3年前くらいから「このままじゃまずいよね」ということでいろいろ手を打っているんですが、なかなか結果につながらず、現在は本当に追い詰められている状況です。