(北村 淳:軍事社会学者)
北朝鮮は5月4日と5月9日に弾道ミサイルを試射した。いずれも飛距離300キロメートル前後の短距離弾道ミサイルではあったものの、北朝鮮の弾道ミサイル試射などの活動を禁止した「国連安保理決議1695」に違反したことになる。しかしながらこれまでのところ、アメリカ政府をはじめ国際社会では北朝鮮の決議違反は取り沙汰されていない。
トランプ大統領の本音
5月4日に引き続き9日にも北朝鮮が弾道ミサイル試射を実施したことを受け、トランプ大統領は「誰もハッピーじゃないよ」と懸念を表明した。しかし、そのあとのPOLITICO(政治専門の米ニュースメディア)によるインタビューでは、北朝鮮が試射したのは短距離弾道ミサイルだから大した問題ではないと語っている。主なやり取りは以下の通りである。
POLITICO 「ペンタゴンは北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことを確認しましたが、これはあなた(トランプ大統領)と金正恩の間の信頼を反故にするものと考えますか? あなたはこれに対して怒っていますか? または失望していますか? そしてアメリカはどのように対応すべきと考えますか?」
トランプ大統領 「いいえ(怒ってもないし)、いいえ(失望してもない)、全然そのようには思っていないよ。それらは短距離(弾道ミサイル)だった。それらは短距離だったから、私は信頼が崩れたとは思っていない。いつかは対抗措置をとるかもしれないが、それは今ではない。それらは短距離で取るに足らないミサイルだった。まったく取るに足らないものだよ」
POLITICO 「あなたは、北朝鮮の弾道ミサイル発射を止めさせたことを大変誇りにしていましたが、これ(今回のミサイル試射)は挫折とは考えられませんか?」
トランプ大統領 「・・・それら(試射した飛翔体)のうちのいくつかは、ミサイルですらなかった。北朝鮮が発射した(飛翔体の)いくつかは、ミサイルじゃなかったのだ。しかし、これ(ミサイルだった飛翔体)は短距離(弾道ミサイル)だったのだ。だから私は信頼が崩れたとは考えていない。何らかの措置をとるときにはあなたに伝えよう。つまり、ある時点で対抗措置をとる可能性はある。しかしながら、今ではないよ」